ただ、この措置はマネックス証券でライブドア株を使って信用取引を行っている個人投資家に限定されたもの。大多数の投資家は、本質的には影響を受けない措置であった。しかし市場では、マネックス証券の投資家が追加の保証金を調達したり、他の銘柄を含めた建玉を精算したりするとの連想が強まり、ライブドア株を含めた幅広い銘柄で売りが波及していった。
そして、事態が深刻になると見た岩井証券(現・岩井コスモ証券)もライブドアと関連株式の代用掛目をゼロと評価。他の証券会社においてもライブドア株を始めとしたさまざまな株式の担保評価額が下落し、市場全体において売りが売りを呼ぶ騒ぎとなった。
本来はライブドアショックと無関係なはずの日経平均株価も、ライブドアショックを受けて1万6500円近辺から1万5300円台まで急落した。その後、日経平均株価は勢いを戻したが、最終的にマザーズ指数は新興市場への信頼失墜なども相まって下げ相場となった。マザーズ指数は堀江氏の家宅捜査もあって1年間で約3分の1にまで落ち込んだのである。
ライブドアショックは、特定の証券会社による「鶴の一声」が特定の銘柄だけでなく市場全体をショック状態にしてしまった事例であると見れば、“マネックスショック”ともいえるかもしれない。
このように考えると、今回のFTXショックはむしろ“バイナンスショック”と言い換えられるだろう。そもそも今回の相場急落の発端は、FTXのライバルであるバイナンスCEOであるCZ氏のたった一つのツイートによるものだったからだ。
CZ氏は、21年時点で約3000億円(約21億ドル)のステーブルコインと、FTXによるトークン「FTT」を所有しており、このうち、手元のFTTを全て売却すると突如発表したのだ。同氏は市場への影響を最小限にするとも宣言していたが、「これからあなたのトークンを数百億〜数千億円分売ります」と発表されれば、多くの投資家はわざわざ買い向おうとは思わないだろう。
最終的にはFTXの企業体質に大きな問題があったことに疑いはない。しかし、100兆円を超える市場がたった1人の”呟き”によって左右されてしまうという点も憂慮すべきだろう。現に、FTXの件以降はCZ氏のツイート一つでビットコインの値段が数%上下に動く展開も続いた。これらの点については、やはりインサイダー規制や相場操縦に関する法整備や自主規制も業界として求められてくるだろう。
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