世界有数のシェアを持つ大手暗号資産(仮想通貨)交換業者のFTXが経営破綻に追いやられた。その経緯を見ると、今から約16年前に発生した“ライブドアショック”をほうふつさせるものがある。まずはライブドアショックの事例を確認しながら、今回の“FTXショック”との共通点をピックアップしたい。
ライブドアショックとは、その名の通りライブドアを巡って巻き起こった騒動だ。同社は当時、ホリエモンこと堀江貴文氏が率いていた東証マザーズ(現・東証グロース)上場企業だった。フジテレビの大株主であるニッポン放送に株式公開買い付けを仕掛けたり、近鉄球団を買収しようとしたりといった姿勢がワイドショーなどを通じて盛んに取り沙汰されていた。当時のライブドア人気は相当なもので、小学生も同社株を保有していることがマスコミを通じて報じられるほどだった。
そんなライブドアは、2006年1月16日、ライブドア本社や堀江貴文氏宅への家宅捜索が開始されたことで急転直下の事態に陥る。堀江氏にかけられた容疑は、証券取引法(現・金融商品取引法)違反であった。捜索当日の朝はライブドア株にそれほど大きな値動きはなかったが、午後になると売りが目立つようになってきた。ただし、この時点ではライブドア固有の事案と市場は認識していたため、他市場や指数に対する影響はほとんどなかった。
では、なぜ影響が広がっていったのか。実際に市場の大暴落を招いたのは、翌17日にマネックス証券によって行われたライブドア株の「代用掛目ゼロ評価」によるものだったという見方がある。
「代用掛目」とは、信用取引において現金ではなく、株式を保証金の代わりにして建玉を保有するために用いられるパラメーターのことだ。一般に、株式は現金と比較して価格変動リスクや流動性が大きい資産とされる。そのため、株式を担保に信用取引の資金を投資家に貸す際には、精算時に損失が広がりすぎないよう、時価評価額の80%程度で割引評価される。
当時の市場では、多くの投資家がライブドア株を「代用有価証券」として信用取引における差入保証金の代わりとしていた。そのような状況下で突如ライブドア株式の代用掛目が0%になるということは、事実上「ライブドア株を代用有価証券として認めない」ということになる。通常、差入保証金は30%ほどに設定されていることが多い。例えば、ライブドア株を担保に1000万円分の信用取引を行っていた投資家であれば、突如約330万円の追加保証金の差入れを請求されることとなる。投資家はその金額をどこからか調達して今の建玉を維持するか、ポシジョンを精算するかの選択を余儀なくされたのだ。
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