カー・オブ・ザ・イヤーの獲得は、自動車メーカーにとって商品に箔がつくことを意味します。専門家が「今年一番のクルマだ」と認めるわけですから、賞を獲得した自動車メーカーは、誇らしげに広告やCMに賞の獲得を明記するようになります。そして、ユーザーも、それを見て「専門家のお墨付き」であることを理解し、購買意欲を高めることになるというわけです。
ですから、自動車メーカーは、賞の獲得に向けて、選考員会向けの追加の試乗会を開催しています。もちろん通常の試乗会でも、選考員を確実に呼びます。逆に言えば、選考員は必ず、候補に挙がったクルマを試乗していることが求められるのです。
こうした自動車メーカーの賞獲得に向けた動きがあれば、どのクルマが賞を獲得するのかは、事前になんとなくわかってしまうものと思うかもしれません。しかし、実際のところ、RJCカーオブザイヤーはまだ小さなクルマが強いという傾向はありますが、日本カー・オブ・ザ・イヤーの予測は非常に困難である、というのが個人的な実感です。
なぜなら、選考員は、みな自動車メディアで働く人間ですが、それぞれ評価基準や好みが異なっているのです。製品としての出来を重視する人もいれば、売れ行きを重視する人、社会的な意味を最優先に考える人もいます。そのため投票結果としては、まったくのバラバラ。最終選考では、選考員1人ずつの投票内容が公開されますが、その内容にはいつも驚かされてばかりです。
あえて言えば、どのようなクルマが選ばれるのか、その選考こそが世相を反映しているということでしょう。選考員も日本の空気の中で生活していますから、当然、その判断にも世相の影響があるはず。12月8日になれば、日本カー・オブ・ザ・イヤーの最終選考も発表されます。今年のグランプリに、どんなクルマが選ばれるのかに注目です。
1966年9月生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく“深く”説明することをモットーにする。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング