労働法に詳しい株式会社Works Human Intelligenceの社労士・井口克己氏が、人事労務担当の素朴な疑問を解決します。
Q: 当社では昨年から管理職向けにジョブ型の人事制度を導入しました。各ポストごとに職務記述書を作成し、責務を全うできない場合は、降格、解雇もありえるとしています。
1年間運用した結果、改善の見込みのない一部の管理職に退職勧奨をし、本人が受け入れない場合は解雇することを決めました。毎月のように直属の上司から指導をしても、一向に改善されないことから、踏み切ることにしました。
人事制度の切替時に労働条件の変更の合意を得ているので問題ないと思いますが、注意点はあるでしょうか?
A: 職務記述書に記載されている責務が遂行できないことだけを理由に解雇した場合、客観的合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められず無効となることがあります。また、執拗な退職勧奨は、退職が無効になるばかりか損害賠償の対象となることもありますので注意が必要です。
ジョブ型の人事制度に切り替えても、不足している能力を具体的に指摘し、改善のための指導をすること、他の部署に異動させるなどの解雇回避の実施は避けられません。
日本では、職務や能力をあらかじめ定めず新卒で採用して会社で成長させて配置する「メンバーシップ型」という人事制度が主流です。しかしながら、市場の急速な変化に対して会社内の人材だけではタイムリーに対応できないことが懸念されています。その解決策の一つとして、事業環境に応じた組織、職務を定め、必要な能力を持つ人を確保するジョブ型の人事制度が注目を集めています。
パーソル総合研究所 の「ジョブ型人事制度に関する企業実態調査」によると、ジョブ型人事制度を導入済みの企業の割合は18.0%、導入を検討中は39.6%となっています。半数以上の企業がジョブ型人事制度に前向きに取り組んでおり、日本でも普及していくことが予想されます。
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