クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

やっぱり日本は遅れているのか 技術面だけでは語れない、FCVやEVの世界高根英幸 「クルマのミライ」(1/6 ページ)

» 2022年12月08日 08時00分 公開
[高根英幸ITmedia]

 FCV(燃料電池自動車)であるトヨタMIRAIが第2世代となり、都心部では燃料電池バスが路線バスとして活躍しているが、世間のイメージでは「水素社会はまだまだ先のこと」というイメージだろう。

 しかし実際には日本国内でも着々と水素エネルギーの利用が進んでいる。FCバスは水素利用を意識することなく乗車できるし、周囲に走っているクルマがEVでもFCVでも、無関心なドライバーが大多数、ということなのだ。

トヨタ自動車の「MIRAI」

 意外と知られていないが、全国各地で水素は利用されている。FCVではなく、工場の副生水素を発電機やFCフォークリフトの燃料として利用しているところが広がっているのだ。

 それでもエネルギー全体で見れば、石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料と比べれば微々たる量でしかない、というのもまた事実だ。普及への道筋をどうつくり導いていくか。ということも課題ではあるのだが、「この意外と知られていない」ことも問題なのだ。

都内で路線バスとして走っているFCバスのトヨタSORA。EVと同じく静かなだけで乗員はECVであることを意識することはほぼない。しかし、その技術は間違いなく世界最先端だ

 そもそも水素をエネルギーとしてアピールするやり方も少々問題がある。水素や合成燃料は、つくり出すのにそれ以上のエネルギーを必要とすることに触れないのは、まやかしと取られてしまう懸念もある。

 もちろん発電しても蓄電しておくのでは膨大なバッテリーが必要になるし、そのバッテリーも劣化するから、違う形で蓄えておくのにも水素は都合がいいのは確かだ。しかし水素は無尽蔵に存在するのと、それをエネルギーとして利用するのは別の問題だ。

 だが、そうした表面的なことではなく、日本社会の基本的な体質に問題を抱えている。それを解決しなければ、日本に水素社会がやってくることも、国際市場で日本の自動車メーカーが次世代車の販売でリードしていくことも難しいだろう。

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