相鉄・東急「新横浜線」開通で影響する16路線を読み解く杉山淳一の「週刊鉄道経済」(7/7 ページ)

» 2022年12月17日 09時03分 公開
[杉山淳一ITmedia]
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2つの提案

 相模鉄道と東急電鉄の直通によって、JR・相鉄直通線に新たな展開があるかもしれない。東横線直通方面に比べると、現在のJR・相鉄直通線は存在価値が薄まるような気がする。

 JR・相鉄直通線で羽沢横浜国大の次の駅は武蔵小杉、その先に渋谷と池袋がある。これらは東横線、さらに副都心線で同じ駅がある。ちなみに相鉄線二俣川〜渋谷間は新横浜線経由で39分、540円。JR・相鉄直通線経由で41分、780円。JR経由は鶴見まで遠回りするけれど所要時間の差は意外にも小さい。しかし運賃は東横線経由のほうが安い。二俣川〜池袋間は新横浜線経由で56分、840円。JR・相鉄直通線経由で53分、860円。こちらも東横線経由が安い。

 つまり、相模鉄道沿線からJR・相鉄直通線経由は選択されないかもしれない。JR・相鉄直通線に利点があるとすれば、JR線でもっと遠くへ行く場合や、武蔵小杉駅で横須賀線に乗り換えて東京方面に行く場合だ。

 それならいっそ、JR・相鉄直通線は埼京線方面ではなく、横須賀線品川、東京方面に向かった方が良さそうだ。相鉄にとっては行き先が増えるし、JR東日本にとっても業績不振といわれるJR・相鉄直通線の乗客を得られる。もしかしたら、品川方面直通になることも考慮して、「埼京線」ではなく「JR・相鉄直通線」としたのではないか。

 もう1つの提案は「旅客案内に系統番号の採用」だ。列車の行き先表示は終着駅だけだから、途中の主要駅が分からない。現在も京急電鉄空港線の各駅で、行き先を見ただけでは品川に行く列車か横浜に行く列車か分かりにくい。羽田空港第1、第2ターミナル駅は今後、引き上げ線を設置して降車ホームと乗車ホームを分ける構想がある。同じプラットホームから正反対の方向の列車が出発する。初見殺しだ。

 そこで、新横浜線系統の場合、東横線なら相鉄本線方面を「S01(系統、以下同)」、いずみ野線方面を「S02」、新横浜止まりを「SH」、みなとみらい方面を「MM」、小手指方面を「SB」、森林公園方面を「TJ」、高島平方面を「I01」、鳩ヶ谷方面を「N01」、浦和美園方面を「SR」などとする。まるでバスみたいだけど、例えば新横浜から渋谷に行きたい人には「SB」か「TJ」に乗ればいい、と説明できる。

 国内前代未聞の16路線直通だ。分かりやすく便利な路線にするために、鉄道各社がどんな工夫をするか。正式なダイヤ発表も含めて、開業が楽しみだ。

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社アスキーにてPC雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年よりフリーライター。IT・ゲーム系ライターを経て、現在は鉄道分野で活動。著書に『(ゲームソフト)A列車で行こうシリーズ公式ガイドブック(KADOKAWA)』『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。(幻冬舎)』『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法(河出書房新社)』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」。


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