会社の初詣は「宗教の自由」の侵害? どんな場合にアウトになるのかQ&A 社労士に聞く、現場のギモン(2/2 ページ)

» 2023年01月03日 12時00分 公開
[卯城恒生ITmedia]
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「希望者のみ」の場合の注意点

 一年の始まりに全員で集まり祈願することで、会社への帰属意識や一体感を高めて事業の発展や社員の満足感につなげたいという気持ちも理解できます。しかし、初詣の持つ宗教的側面を考慮すると、社員全員に対して業務命令として初詣に行くのではなく、参加・不参加の自由を社員に与えた上で、希望者のみ初詣に参加するという形を採ってはいかがでしょうか。

 なお、参加・不参加の自由を選択させたうえで、不参加を表明した社員に対して不利益な取扱いをしないように注意しなくてはなりません。業務命令で初詣に参加する場合には、参加者には当然賃金が発生します。

 しかし、何らかの理由で初詣に参加しない社員を欠勤扱いとして賃金を支払わないことは、前述の労働基準法第3条に抵触することになります。その場合、不参加を希望する社員については、会社で通常業務を行うという取扱いをしておけば、通常の賃金が支払われていますので差別的取り扱いは発生しません。なお、不参加の社員に対して自宅待機とさせる場合であっても、欠勤扱いとして賃金を支払わないことは不利益取扱いとなるので注意が必要です。

 昨今はさまざまなダイバーシティー&インクルージョンが企業にも求められる時代になり、社員の国籍やカルチャーも多様化しています。初詣は日本文化を体験できる貴重なイベントですが、信教や思想などに関わらず、社員全員が新しい一年の出発を祝い新しい気持ちで一丸となって会社の目標達成に向かえるようなイベントを催してみてはいかがでしょうか。

社労士の回答まとめ

 初詣の参加が強制されている場合には、信教の自由を侵害する可能性があるので注意が必要です。なお、所定労働時間内に初詣をする場合には通常の賃金が発生する他、参加しない社員に対しては不利益な取り扱いをしないようにする必要があります。

著者:卯城恒生(うじょう・こうき) 社会保険労務士

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1974年神奈川県横浜市生まれ。2007年に社会保険労務士試験合格後、2009年に卯城社会保険労務士事務所を設立。

労働関係法規に関する助言を行い、適切な労務環境の整備を図りながら、中小企業の発展を支援することを得意としている。


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