クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

なぜ東京オートサロンで「AE86」が登場したのか 忘れてはいけない“大事な議論”池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/5 ページ)

» 2023年01月16日 08時06分 公開
[池田直渡ITmedia]

問題は規制のタイミング

 しかし、そこで問題となるのは規制のタイミングである。世の中では2050年にカーボンニュートラルを達成するには、“ちょっと頑張れば何とかなる”といった形で伝えられているが、そんなに簡単な話ではない。

 そもそもクルマは耐用年数が長い商品である。乗用車ですら平均13年(国内)といわれている。つまり平均値で見ても37年には、CO2を排出するシステムが廃絶されていなければならないことになる。

 もっと言えば、「カーボンニュートラルを達成する」ことが目標であるなら、平均で見ても仕方がない。偏差にもよるが、多少乱暴に平均が中央値だとみなすならば、その時点で半数がまだカーボンニュートラル化できないということになる。堅めに見れば7年後の30年くらいにはゼロエミッションに移行しておかないと難しい。

 そんなことはいくら何でも無理だ。7年後に購入できる新車はBEVかFCVに限る規制を作る。最廉価な軽で250万円、登録車なら400万円。以後BEVまたはFCV以外の保有車の走行を段階を追って禁じていく。禁じられた人はクルマの所有をあきらめるか、前述の価格のクルマを買うしかない。それができて初めて50年のカーボンニュートラル化達成ということになる。

 しかもこれが耐用年数の長い商用車だとどうなるか? こちらは20年は平気で使われる。場合によっては30年だ。こうなると、今すぐ対応してももう間に合わない。手遅れのタイミングに入っている。

左の図を見て分かる通り、年間8000万台新車が売れても、保有の15億台が全部入れ替わるには途方も無い時間がかかる。右図を見ると仮に35年に新車がすべてEV化されても、50年の全保有台数には大きな変化は与えられない

 だから今さら、商用車の新車だけに手を打ってもそれだけでは足りない。乗用車は少しマシとはいえ、現実的に考えれば、既に路上を走っている保有のクルマについてのカーボンニュートラルを考えなければ、どんどん状況が悪化するばかりである。

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