そこを解決する手立てがコンバージョンである。要するに既に路上を走っているクルマを改造することによってカーボンニュートラル化し、新車のみならず、保有車両の面からも総合的に脱炭素を進めようという考え方である。
このための手段としては、水素エンジンは極めて有望である。保有の車両をカーボンニュートラル化するという意味では、FCVもBEVも、コンバージョン作業のコストが、おそらくは新車購入より高くなってしまうが、水素エンジンはその面でコスト的に優位であることは間違いない。だからトラックの、しかも保有の車両をカーボンニュートラル化するとすれば水素エンジンへのコンバージョンが期待されるのである。
トヨタ自動車ブースでの豊田章男社長のスピーチから抜粋すると、このモデルの意義については以下のように説明されている。
「多くの自動車メーカーが、2030年から40年頃をターゲットにバッテリーEVへのシフトを目指しています。ところが現実には、これから売り出す新車をEVにするだけでは2050年のゼロカーボンは達成できません。
86をコンバージョンした技術は、まだまだこれからですが、本日、こんなお話をさせていただくことで、クルマ好き達がカーボンニュートラルで大好きなクルマに乗れなくなっちゃう……と寂しく思うのではなく、クルマ好きだからこそやれるカーボンニュートラルがあるんだと、未来にワクワクしていけたなら今年、世界に向けて、大きなメッセージが発信できるのではないでしょうか?」
実は22年9月、スーパー耐久の茂木(栃木県)で、豊田社長と立ち話をする機会があり、そこでこの話を提案したのは筆者である。
ネットを見ていると、「FCVがあるのに、効率で劣る水素エンジンの開発などという無駄なことをなぜトヨタは進めるのか」という意見が散見されていた。もちろんトヨタは水素エンジンの実証実験の最初から、商用車のコンバージョンについては念頭に置いていたし、質問すればそう答えてもいたのだが、モータースポーツのカーボンニュートラル化というもう1つのテーマのメッセージ性の強さの前に、あまり報道されてこなかった。
だからこそ、筆者は「年明けのオートサロンに、AE86の水素コンバージョンを出品して、保有のクルマのカーボンニュートラル化を訴求したほうが良いのではないか」と提案したのである。
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