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CFOこそ「事業のためにリスクを取る」判断をできる人に ビジョナル末藤CFO対談企画「CFOの意思」(2/2 ページ)

» 2023年01月20日 16時30分 公開
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証券会社出身だが、「典型的なCFO人材ではない」と考える理由

嶺井: 今までのご経歴ゆえの強みや弱みはありますか。

末藤: 私は典型的なCFO人材ではありません。

 モルガン・スタンレーでコーポレートファイナンスの仕事をしていましたし、事業会社でもファイナンスの仕事をした経験はありますが、ファイナンスから離れている時期もありました。ファイナンス、マーケティング、経営戦略やコンプライアンスといった様々な領域を通して、企画から執行までを含め、ホリスティック(全体的)に攻めや守りの経験がある。過去に、さまざまな経験をしてきたからこそ、ビジョナルにおいても、全く同じではないとしても、ある事象に対して、「きっとこういうことだよね」と点と点をつなげられる。これが私の強みだと感じています。

 その半面、経理や総務など未経験の分野もあります。どの領域においても、その領域に特化した専門性がある方にかなわないので、自分は大局を見ることに注力し、話をきちんと聞き、判断をする必要がある時は判断をし、チームに背中を預けることが大切だと考えています。

いまだ希少な女性CFO

嶺井: 現在、スタートアップの数に対してCFO候補の人数が絶対的に少なく、CFOが不足している状況です。その中でも投資銀行や監査法人には優秀な女性が多くいらっしゃるのに、女性CFOの数は極めて少なく、女性のCFOを増やすことがCFO不足を解消する上でも大きな伸び代だと考えますが、どうすれば増えるでしょうか。

末藤: ジェンダーに関わらず言えることだと思いますが、CFOになる側とCFOを選ぶ側、両方のマインドセットを変えることが大事なのではないでしょうか。

 まずCFOになる側は、リスクを恐れず飛び込んでみること。そこに立つことで景色が変わり、見えてくるもの、考えることが変わります。CFOに向ているか否かは、やってみなければわからないですし、環境によって合う合わないもあると思います。だから、その一歩を踏み出してほしいですね。リスクを取らないことが、キャリアにおいて一番のリスクだと思います。

 私自身は、CFOを目指していたわけではありません。ファイナンスをやり、マーケティングをやり、経営戦略をやった後にコンプライアンスの仕事に携わった。CFOにつながることを想定していたわけではありませんが、経営に携わるためには、さまざまな経験がプラスになると信じていましたし、何よりも挑戦をすることが楽しかった。

 コンプライアンスの仕事をさせていただいていた際には、規制業種で責任者として判断をしなければならず、ある種のおそれを感じました。 しかし、「そのポジションに選んでくれたということは、できると思ってくれたからだ」と考えた。なので、挑戦しない理由はありません。実際、そこから見える景色は素晴らしいものがありました。

 CFOを目指す方の中には、最短で近道を通っていきたいと考える方もいらっしゃるかもしれません。それはそれで一つの考え方です。しかし、やったことがないことに直面すると、人は不安を感じるかもしれませんので、いかに沢山の修羅場を経験するかは大切だと思います。

 最短距離でもCFOへの道は作れるでしょうが、あちこち寄り道をしたことが、プロフェッショナルパーソンとして生きていく上で、私にとっては大きなプラスの選択になったのではないかな、と考えています。

 リスクを取りつつキャリアを積み、そこからCFOを目指していただく選択肢もあると思います。なので、広く色々なことにチャレンジしていただきたいですね。もっとも、家族やパートナーの理解とサポートなくしては実現できないので、周りから応援してもらえるようにすることもとても大切です。

 選ぶ側にとっても、誰かをCFOとして採用するのはリスクを取る判断なのかもしれません。そのリスクを一度は取ってみていただきたいです。南との出会いがあって、当社に転職したとお話しましたが、一緒に仕事をしたこともなく、パネルディスカッションで同席しただけの私にCFOを任せてくれた南は、大きなリスクを取ったと思います。でも、そのチャンスをくれたから今がありますし、本当に感謝しています。

 多様性という観点から、女性がマネジメントチームの一員であることは大事だと思います。または、全く「THE CFO」ではない人を選ぶということでもいいかもしれませんね。

嶺井: ビジョナルで経営陣に加わってから、目線や仕事への向き合い方、必要なスキルなど、変わってきたということはありましたか。

末藤: 大きくは変わりませんね。もちろん、経営に携わるようになることで判断をする場面が増えますが、その前のステージでも経営者と一緒に仕事をしているわけです。経営者の立場に立って常に考えていました。

 違いとしては自分が判断材料を与えるだけの存在なのか、それとも最終的に判断する存在なのかというところ。視点や考え方というより、責任をもって判断することへのおそれをなくしていかなければいけないというところが変わったところかもしれません。

 女性CFOを増やす方法について、嶺井さんはどう考えますか?

嶺井: ロールモデルを増やしていくことが大切だと思っています。それはCFOイベントを主催する自分にできることだとも思っています。

 というのも、私自身スタートアップにCFOとして移れたのは、外資系の投資銀行や大手証券会社からスタートアップへ移って当時グリーでCFOをされていた青柳さん(現メルペイ社長)、ミクシィでCFOをされていた小泉さん(現メルカリ会長)というロールモデルの存在・活躍が大きいからです。自分もうまくいくかもしれないと考えられました。

 同じように、女性のCFOで活躍される方がどんどん出てきたら、「この人と私はバックグラウンドが近いから、自分もチャレンジしてみようかな」とか「うまくいくかもしれない」と考えるきっかけになるかもしれませんよね。

CFOを目指している人へのメッセージ

嶺井: 最後に、CFOを目指す方へのメッセージをいただけますか。

末藤: CFOでもその他のCxOでも、もしくはビジネスパーソン全般であっても、自分の強み、コアなスキルセットを一つは持つことが大切です。

 ただ、一つだけでは、これからのプロフェッショナル人材として、またはリーダーとしての役割が務まらないと思いますので、コアとなる強みを持ちながらも、いかに横に広げられるか、総合力、経験を培えるかというところがとても大事だと私は考えているので、ぜひ、いろんなことにトライしてみていただきたと思います。

嶺井: 本日はありがとうございました。



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