岸田首相が「人への投資」を宣言してからというもの、注目度が上がっている人的資本開示。11月、金融庁がその詳細を正式に発表しました。これを受け、開示のために多くの企業が動いているようです。
しかし、人を資源ではなく資本と捉える人的資本経営において、開示は決してゴールではありません。また、大企業や上場企業に限られた話でもありません。未上場企業や中小企業も「当社には関係ない」とは言えないワケや、取り組みのための必要な視点をお伝えします。
2023年3月期決算以降は、有価証券報告書の「従業員の状況」に関して、女性管理職比率や男性育児休業取得率、男女の賃金格差の記載が新たに義務付けられます。
また、「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」には「サステナビリティに関する考え方及び取組」という記載も登場しました。中でも、
につき、戦略、指標を用いた目標および実績を記載すること、という部分は要注目です。
これまで、人的資本の取り組みや指標について「統合報告書」で開示する上場企業は多くありましたが、義務ではありませんでした。
しかしながら今後は「有価証券報告書」に記載すること、とあるため、つまり全ての上場企業に開示の義務が発生します。
ここで気になるのは、2021年に改定されたコーポレートガバナンスコードとの関係です。以下は「コーポレートガバナンス・コードへの対応状況」から引用しています。
この区分では、プライム市場とスタンダード市場は補充原則まで含めたものが適応されていましたが、グロース市場は5原則にとどまっていました。
また、中核人材の多様性の確保や、人的資本の開示などについては、「補充原則」に該当していました。つまりグロース市場は基本原則以外は適応されていませんでした。
このコーポレートガバナンスコードにおける区分と、金融庁の改正案は、いずれ整理されることでしょうが、今回の改正案は「有価証券報告書への開示義務」についての案ですので、より強い書き方になっています。なお、パブリックコメントを受け付けた後、今後の議論の結果次第では、開示対象や方法が記事執筆時点(22年12月)で得られる情報と異なる可能性があります。
結論としては、人的資本の開示において、かなり踏み込んだ案となっており、上場企業が全て開示対象だとするならば、未上場企業や社会へのインパクトも非常に大きいのではないでしょうか。
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