「運輸連合」「交通税」とは何か 日本で定着させるために必要なこと杉山淳一の「週刊鉄道経済」(6/10 ページ)

» 2023年01月21日 08時30分 公開
[杉山淳一ITmedia]

 65年の(西)ドイツといえば、フォルクスワーゲン・ビートルの生産開始から20年。オペルが4ドア大衆車のカデットBを登場させるなど、国民に自動車が広まった時期だ。日本では自動車を優先して公営交通の路面電車が次々に廃止された。ドイツは公共交通の協働の仕組みをつくった。

 公共交通を重視したハンブルグ市は、運輸連合の設立を実務面と財政面で支援した。運賃の決定権は市にあり、運賃水準は低く抑えられた。その結果、輸送実績、運賃収入ともに増大した。しかし、オイルショックによる経済危機や、都市の無秩序な発展、サービス向上の投資によって、交通事業者が破綻し、運輸組合を維持できなくなった。その結果、再度立ち上げられたハンブルグ運輸連合は、関連する自治体が出資する有限会社となった。運賃収入の管理と再配分の権限も自治体に移っている。

 運輸連合はドイツの多くの地域で採用されているけれども、すべて同じ方式ではなく、自治体と事業者の権限分担などで差異があるという。共通する要素は、独立した法人格を持ち、専属の担当者が共通運賃制度と運行計画を定め運用することだ。

 ドイツにはほかに、幹事となる会社を持たない「運輸同盟」、共通運賃制度のみ連携する「運賃同盟」、個々の事業者が必要に応じて運行計画の連携や乗車券の相互利用を実施する「部分的な連携」がある。日本の相互直通運転やICカード乗車券は「部分的な連携」にあたる。

運輸連合の一例。自治体出資の運輸連合が主体となって運行計画を策定し、交通事業者と輸送契約を結ぶ。輸送サービスに応じて支払いが行なわれる。運輸連合の後ろ盾には州があり、その後ろ盾に国があることに注目(出典:共同経営推進室、「運輸連合」の機能と運営の実際

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