日本では、公共交通の維持について「上下分離」と「自治体負担増」の選択肢のみで行き詰まった感がある。ドイツ発祥の「運輸連合」や、フランス発祥の「交通税」の考え方は日本では新しく、日本の事情に取り込む研究が必要だ。
運輸連合も交通税も、都市で始まり、地方に伝播していった経緯がある。まずは都市型の成功経験が必要だろう。兵庫県であれば、まず瀬戸内側の公共交通事業を再編し、中国山地、山陰へ広げて、全県の取り組みとすべきではないか。
山陰地域だけで運輸連合が形成できるかというと、人口や事業者数の点で疑問符が付く。運輸連合であろうと交通税を導入しようと、利用者数の少ない鉄道はコスト面で不利だという現実は変わらない。新しい枠組みのなかで鉄道を維持するためには、やはり最初の問題「自治体の覚悟」に立ち戻る。鉄道の赤字補てんだけではなく、鉄道を生かすための設備投資が必要だ。
兵庫県の「JRローカル線維持・利用促進検討協議会」の最終報告書は1月末までにまとめられる。併せて熊本県の運輸連合と、滋賀県の交通税の動向に注目である。地方交通を支える課題の正解が見つかるかもしれない。
乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社アスキーにてパソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年よりフリーライター。IT・ゲーム系ライターを経て、現在は鉄道分野で活動。著書に『(ゲームソフト)A列車で行こうシリーズ公式ガイドブック(KADOKAWA)』『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。(幻冬舎)』『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法(河出書房新社)』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング