「運輸連合」「交通税」とは何か 日本で定着させるために必要なこと杉山淳一の「週刊鉄道経済」(8/10 ページ)

» 2023年01月21日 08時30分 公開
[杉山淳一ITmedia]

 熊本のバスといえば、19年9月14日に実施された「熊本県内バス・電車無料の日」のインパクトが大きかった。これは熊本城の南側の商業施設「SAKURA MACHI Kumamoto」のグランドオープンを記念した取り組みだ。この商業施設は、日本最大といわれた旧熊本桜町バスターミナルとその周辺の再開発事業だ。1階と地下1階に路線バスのターミナルを設置し、熊本市の交通結節点の機能を持つ。

「熊本県内バス・電車無料の日」は大型商業施設の開業と合わせて実施された(出典:産交バス、熊本県内バス・電車無料の日実施レポート

 「SAKURA MACHI Kumamoto」は830台の駐車場を備えているとはいえ、開業日は周辺道路の大渋滞が見込まれた。そこで運営事業者の九州産交グループは、市内の他の交通事業者と連携して、「熊本県内バス・電車無料の日」を立案した。運賃補てんなど費用はすべて九州産交グループが負担している。対象外の路線は空港リムジンバス、県外を結ぶ高速バスなどで、その他の路線バス、市電、熊本電鉄線は無料となった。

 その結果「SAKURA MACHI Kumamoto」は1日で25万人を集客。さらに天草方面の観光地、温泉地などに向かう人も多く、無料対象路線は大混雑となり遅延も発生した。しかし交通渋滞はほとんど発生しなかったという。産交グループの支出費用総額は約2500万円、熊本市中心部の経済波及効果は約5億円だった。この実績は産交グループがレポートを公開している(リンク

単なる集客キャンペーンではなく、ビッグデータやヒアリングで公共交通利用の調査も実施した(出典:産交バス、熊本県内バス・電車無料の日実施レポート

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