ヤマダが地方、郊外を席巻してトップシェアを確保した手法は、ロードサイドに売場面積3000〜5000平方メートルというロードサイドでは最大級となる店舗を出店して、売場が相対的に小さい競合を品ぞろえで圧倒しつつ、規模による購買力でも価格競争に打ち勝つことで、相手を倒してしまうというものだった。
ヤマダの前にトップシェアとなっていたコジマもワンサイズ小さい店舗で全国展開して成長していたのだが、ヤマダの大型店攻勢の前にトップシェアを奪われ、その後ビックの傘下に入ることになった。この戦略によって、同時多発的に勃興していた地方量販店チェーンの大半が撃破され、ヤマダは圧倒的なトップ企業となったのだが、ケーズ、エディオンなど同じく郊外大型店を展開する大手企業が生き残って拮抗(きっこう)する時代に入る。
大手同士の戦いは、地方豪族を討伐するような訳にはいかず、大手の寡占化が進んだ時点で、ヤマダの成長フロンティアは消失した。それどころか、10年代以降は少しづつではあるが、郊外家電マーケットにおけるヤマダのシェアは押され気味になっていた。
図表2は郊外型家電量販店の売り上げ(ヤマダはデンキ事業売り上げ)の推移をみたものである。11年前後に比べて、ヤマダとケーズ、エディオンとの差が小さくなったことは一目瞭然であり、特にケーズは10年3.2倍の差が、1.75倍にまで縮小しており、着実に追い付いてきていることが分かる。
これは両社の立地戦略の差も大きかったと考えられる。郊外で最大規模の品そろえを実現して地方量販店を駆逐してたころのヤマダの店舗は、郊外では最も集客力があるフォーマットを完成しており、これをロードサイドの適地を見つけてどんどん単独店舗で全国展開することで成功した。
後発勢力であったケーズは、同等の品そろえの店舗ながらトップ企業ヤマダに劣る知名度を補うため、超大型ショッピングモールや、食品スーパーを核店舗とする大型商業集積などの隣接地を選んで出店していった。家電量販としては集客力があるといわれるヤマダの単独店だが、大型ショッピングモールなどの商業集積と比べると、その人流集客力は比較にならない。業界内での競争力を頼んだヤマダの大型店はモールコバンザメ戦略をとったケーズに押されるようになっていった。
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