大手の賃上げで広がる格差 人材流出に苦しむ中小企業、採用難にどう対応する?10人採用したが、10人離職も(1/3 ページ)

» 2023年02月14日 08時30分 公開

 賃金構造基本統計調査によると日本における男性労働者(短時間労働者を除く)の賃金は2001年をピークに横ばいが続いています。政府は欧米並みの賃金上昇を目指し最低賃金の見直し、企業へのベースアップの要請、同一労働同一賃金の法制化などに取り組んでいますが、なかなか成果につながっていないのが実態です。

 しかし昨今の急激な物価上昇によって、この状況が一変する気配があります。ファーストリテイリングは物価高への対処や人材獲得を目的に、3月から国内従業員の年収を最大4割引き上げ、初任給も25万5000円から30万円に引き上げると発表しました。また、他の大手企業でもこの流れに追随する動きがみられます。

ユニクロなどを運営するファーストリテイリングは国内従業員の年収を引き上げると発表した(画像はイメージ)

 ただ中小企業にとって賃金アップはなかなか難しいのが現状です。それは、物価上昇が需要拡大による好景気を背景にしたものでなく、生産コストの上昇によるものだからです。

 これにより大手と中小企業の賃金格差はますます広がり、労働者の大手志向はさらに強いものとなるでしょう。そもそも日本国内の労働力人口は右肩下がりです。みずほ総合研究所は25年の6149万人から35年には5587万人へと10%近く減少し、人数にして562万人減少すると推定を出しています。

労働力人口と労働力率の見通し(出所:みずほ総合研究所「少子高齢化で労働力人口は 4 割減」)

 562万人と言われてもピンとこないかもしれませんが、総務省が発表した人口推計(21年10月1日時点)によると北海道が518.3万人、兵庫県が543.2万人、福岡県が512.4万人ですから、そのインパクトの大きさが分かります。

 よって、大手との賃金格差は人材確保という点で、中小企業にかなり深刻な課題を引き起こすといえるでしょう。

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