3つのよくある残業対策、小手先の対応になっていないか? その効果と落とし穴残業代を適切に管理できている?(1/4 ページ)

» 2022年12月01日 08時00分 公開

 経営において、コストの適正管理は極めて重要です。経費にはさまざまな種類がありますが多くの業種において人件費の割合は高く、最も重視すべきコストの一つと考えられています。さらに人件費の中には変動費的な残業代が含まれ、あらかじめ計画した金額よりも膨れ上がる可能性があるため、会社ごとに工夫や対策が講じられています。

 ただ、残業代は法律により計算方法などが決まっていることから、それに合致しない手法の場合は労働基準監督署から是正勧告を受けたり、労働者から訴訟を提起されたりする可能性があります。さらに、未払い残業代の請求権の消滅時効は従来の2年から2020年4月施行の改正民法と合わせ5年(当分の間は3年)に延長となっているため、ここ数年でそのリスクは増大していると言えます。

 今回は、よくある残業代対策とその課題についてご紹介していきます。

よくある残業代対策とその課題を解説(画像:ゲッティイメージズより)

残業代とは?

 そもそも残業代は法律上では、どう定められているのでしょうか。労働基準法では1週間40時間、1日8時間を超えて労働させてはならないと定められており、また「違反した者は6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する」と罰則規定もあります。

 そのため残業させたいときは、いわゆる36協定(サブロクキョウテイ)を締結し労働基準監督署へ毎年届け出る必要があります。

(時間外及び休日の労働)

第三十六条 使用者は、(中略)労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、(中略)行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条(中略)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。

 そして、実際に法定の時間を超えて働かせた場合には割増賃金の支払いが必要になります。

(時間外、休日及び深夜の割増賃金)

第三十七条 使用者が、(中略)前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。(後略)

 会社は残業代さえ払えば残業させることができると勘違いしている人がいますが、以上の通り、36協定を締結して労働基準監督書に届け出るというステップを経なければ労働基準法違反となります。

       1|2|3|4 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.