ワークマンの「おしゃれシフト」は成功するのか アパレル専門家が指摘する新業態への懸念磯部孝のアパレル最前線(4/5 ページ)

» 2023年03月15日 05時00分 公開
[磯部孝ITmedia]

 女性客層拡大の決定打となったのは「滑りにくい靴(ファイングリップレディース)」だ。もともとコックなどが厨房用として履いていた「シェフメイト」という靴が、滑りにくい妊婦用シューズとして話題を呼び、売れた。

妊婦用シューズとして売れた「滑りにくい靴」(出所:同前)

 こうして、本来の作業ウェア以外の一般客向け商品の品ぞろえを増やしていき、18年にららぽーと立川立飛でWORKMAN plus1号店をオープンした。当時の記事によると、事前の折込チラシの配布などの影響もあってか、オープン初日は30分のレジ待ち行列が発生するほどの混雑に。通常のワークマン店舗より4割ほど小さい60坪のスペースながら、平日の売り上げは50万円以上、土日祝は100万円以上の売り上げを誇る繁盛店となり、業界からも大注目の店舗となった。

 一般客を想定した品ぞろえを進めてきた同社にとって、この成功は新業態の出店と業態変更に弾みをつけた。また、当時の来店客の45%が女性で、しかもそのうち45%が初めてワークマンを訪れた人たちだったという。

春夏商品は5テーマが軸

 さて、話を発表会に戻そう。

 23年春夏商品は(1)Vivid、(2)Trend、(3)Travl 、(4)Nature、(5)Toughという5つのテーマが軸になっている。

「Trend」の代表コーデ(出所:同前)

 まず、「(5)Tough」。これはワークマンの本業中の本業ともいえるテーマで、耐久性から耐水圧の高い撥水やマルチ機能搭載のウェアリングだ。スタイリッシュな作業服がそろうラインアップとなっている。

 「(1)Vivid」もワークマン本来の力が発揮できるテーマだ。夜間作業など、危険の伴う現場の作業服は、目立った色でないと安全性が担保されないことから、赤、黄色といった目立った色使いは昔からワークマンが得意分野としていたからだ。今回のワークマン カラーズというネーミングも、このテーマからとったとのこと。

 「(3)Travel」というアウトドアシーンを加えられるテーマも、ワークマンの機能性を得意とした商品とは高相性といえる。アウトドアよりも規模の大きなトラベルにまで、シーンを広げている。

 「(4)Nature」は、サスティナブルがコンセプト。エコ原料や地球環境を考えた製造工程で作られる商品は、客へコスト負担を求めずに展開する構えだ。ワークマンは30年までにPB商品の半分はサスティナブル商品にする目標を掲げており、今後ラインアップが広がっていくことが想定される。

 最後、「(2)Trend」は、レディス市場へのさらなる参入を見込んで設定したものだろう。しかし、既に人気を確立しているユニクロなどと真正面から戦うことは避け、機能性の高さと多ポケットといった収納力による快適さを軸にしたデザインでアピールしていく考えのようだ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.