今回の発表会は、ワークマンらしく商品機能をアピールすべくダンスパフォーマンスを取り入れたファッションショーだったのだが、商品自体は実にベーシックだと感じた。
ワークマンがデザイン例として取り上げるものに「クレイジーパターン」がある。確かに現在はトレンドとしてよく売れているタイプであるものの、あくまで配色テクニックの一つにすぎない。これを「デザイン」と捉える辺り、ワークマンが語るトレンドや、ファッションについての深層度については疑問符が残る。
また、ワークマン カラーズではファッションを前面に打ち出し、機能面は「ステルス」と表現している。つまり、本来デザインの邪魔にしかならないポケットなどの機能性は、買った後に「へえ、こんなのもあるんだ」と気づいてもらう、あくまでおまけに近いものだということだ。
しかし、この「買った後に気づいてもらう」という意図は、やや危険な気がしている。ファッションは、そもそも足を止めさせ、手に取ってもらうまでが難しい。買ってから魅力を知ってもらうのではなく、まずは惜しみなく「ステキ」と感じさせられる仕掛けを凝らすことが重要なのだ。この点は、これまでインフルエンサーを活用して実用面の訴求をしてきたワークマンとしてまだ未成熟の要素だといえる。
その点、魅力的な見せ方を作るのがうまいブランドの筆頭として、やはりユニクロが挙げられる。ユニクロは、ベーシックなデザインの商品を使いながら、UNIQLO_UやJW Anderson、Mame Kurogouchiといったデザイナーコラボのトレンドラインも取りそろえて集客層を幅広くしている。
果たして、ワークマンはレディス分野で支持の裾野を広げ、確固たる地位に上り詰められるのか、注目したい。
磯部孝(いそべ たかし/ファッションビジネス・コンサルタント)
1967年生まれ。1988年広島会計学院卒業後、ベビー製造卸メーカー、国内アパレル会社にて衣料品の企画、生産、営業の実務を経験。
2003年ココベイ株式会社にて、大手流通チェーンや、ブランド、商社、大手アパレルメーカー向けにコンサルティングを手掛ける。
2009年上海進出を機に上海ココベイの業務と兼任、国内外に業務を広げた。(上海ココベイは現在は閉鎖)
2020年ココベイ株式会社の代表取締役社長に就任。現在は、講談社のWebマガジン『マネー現代』などで特集記事などを執筆。
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