ワークマンの「おしゃれシフト」は成功するのか アパレル専門家が指摘する新業態への懸念磯部孝のアパレル最前線(5/5 ページ)

» 2023年03月15日 05時00分 公開
[磯部孝ITmedia]
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アパレル専門家が感じた「懸念」

 今回の発表会は、ワークマンらしく商品機能をアピールすべくダンスパフォーマンスを取り入れたファッションショーだったのだが、商品自体は実にベーシックだと感じた。

 ワークマンがデザイン例として取り上げるものに「クレイジーパターン」がある。確かに現在はトレンドとしてよく売れているタイプであるものの、あくまで配色テクニックの一つにすぎない。これを「デザイン」と捉える辺り、ワークマンが語るトレンドや、ファッションについての深層度については疑問符が残る。

 また、ワークマン カラーズではファッションを前面に打ち出し、機能面は「ステルス」と表現している。つまり、本来デザインの邪魔にしかならないポケットなどの機能性は、買った後に「へえ、こんなのもあるんだ」と気づいてもらう、あくまでおまけに近いものだということだ。

 しかし、この「買った後に気づいてもらう」という意図は、やや危険な気がしている。ファッションは、そもそも足を止めさせ、手に取ってもらうまでが難しい。買ってから魅力を知ってもらうのではなく、まずは惜しみなく「ステキ」と感じさせられる仕掛けを凝らすことが重要なのだ。この点は、これまでインフルエンサーを活用して実用面の訴求をしてきたワークマンとしてまだ未成熟の要素だといえる。

 その点、魅力的な見せ方を作るのがうまいブランドの筆頭として、やはりユニクロが挙げられる。ユニクロは、ベーシックなデザインの商品を使いながら、UNIQLO_UやJW Anderson、Mame Kurogouchiといったデザイナーコラボのトレンドラインも取りそろえて集客層を幅広くしている。

 果たして、ワークマンはレディス分野で支持の裾野を広げ、確固たる地位に上り詰められるのか、注目したい。

著者プロフィール

磯部孝(いそべ たかし/ファッションビジネス・コンサルタント)

磯部孝

1967年生まれ。1988年広島会計学院卒業後、ベビー製造卸メーカー、国内アパレル会社にて衣料品の企画、生産、営業の実務を経験。

2003年ココベイ株式会社にて、大手流通チェーンや、ブランド、商社、大手アパレルメーカー向けにコンサルティングを手掛ける。

2009年上海進出を機に上海ココベイの業務と兼任、国内外に業務を広げた。(上海ココベイは現在は閉鎖)

2020年ココベイ株式会社の代表取締役社長に就任。現在は、講談社のWebマガジン『マネー現代』などで特集記事などを執筆。


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