マーケティング・シンカ論

攻めのコンタクトセンターになるには? 最初の一歩は「三方良し」の思想明日からできる(2/3 ページ)

» 2023年03月22日 08時00分 公開
[小田志門ITmedia]

(2)長期的に取り組むべき3ステップ

 本連載の総まとめにもなりますが、長期的に取り組むべきステップも同時に整理しておきたいと思います。

I 顧客理解を深める

 まずは顧客理解を深めるところからスタートしましょう。自社の顧客はどのような人たちなのか? 自社の商品やサービスを何を期待して利用いただいているのか? 利用後にどのような状況・気分になっているのか? を把握します

 ペルソナの設定と、実際のデモグラフィックデータをあわせたターゲット情報を把握しておくと便利です。ペルソナは「デジタル時代の三方良し」の相手(顧客)のイメージを部門内の共通言語化したもの、ターゲット情報は施策のインパクトを試算する際に使用します。両方あることにより、現状とあるべき姿を理解でき、施策をまわす起点にできます。

II 自社理解を深める

 自社の顧客体験全体の理解を深めましょう。ここで注意したいのが、部門と連携した情報を収集してください。例えばコンタクトセンターは、購買後の体験情報は部内で整理されているかもしれません。それならば購買前の情報を深める必要があります。マーケティングメッセージや販売チャネル、その中でどのようなメッセージで売られているかを把握しましょう。

 また、カスタマーサポートで普段利用しているシステムの全体像をIT部門などの協力を仰ぎながら整理しておくといいでしょう。現場で見ている「管理画面」は誰が作成したものか、どこかの企業から提供を受けているSaaSなのか? などの全体像を、コンタクトセンター部門で把握しておくことは他部署とのコミュニケーションも円滑になると思います。

III 顧客の痛点、サポートプロセスの痛点の把握(CX×EXの課題整理)

 深めた顧客理解に基づき、顧客のボトルネックと、そのボトルネックが「いつ」発生するかを把握しましょう。これにより予防方法と即時解決方法がないかという観点で、課題を設定できます。

 次にサポートプロセスの痛点把握は、オペレーター目線で手間がかかる業務を洗い出しましょう。例えば本人確認や在庫調整の確認に手間がかかるなどのオペレーション時の痛点は、顧客にとっても待ち時間が長いなど痛点であるケースがほとんどです。

 顧客の痛点、サポートプロセスの痛点を解消すると、基本的にはCX×EXの問題解決につながることが多いです。特に後者は一挙両得になりやすいので、課題がある場合は優先度を上げて取り組むといいと思います。

 痛点が解消されれば、FAQやチャットボットなどのセルフサービス体験の構築や顧客データとの円滑な連携、企業から顧客へのプッシュコミュニケーションのチャネルの準備など「顧客の問題に先回りで対処するカスタマーサポート(先回りCS)」の実現にむけた施策を進めていけます。

IV やれることからやる(個別最適と全体最適のバランス)

 (I)から(III)まで実施すると、実際のところは「やるべきことが多すぎる!」という話になりそうです。

 また、大きな課題ほど、推進するための関係者が多くて時間がかかります。そこで、実施の難易度と実施した際のインパクトの2軸で課題を評価し、優先順位を決定しましょう。全体最適はベストですが、そうは言っていられないケースもあるので、リスクを把握した上で部分最適な施策へのチャレンジも並行するといいと思います。

 攻めのコンタクトセンターが最終的に目指すのは、やはり「先回りCS」でいきたいものです。「インバウンドの件数よりも、アウトバウンドの件数が多くなった」というコミュニケーション量の逆転が起きはじめると、顧客満足もかなり向上しているのではないでしょうか。

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