まず、羽田空港アクセス線(仮称)は東京駅周辺や、東北本線、常磐線とのダイレクトアクセスを向上させ、これまで品川で乗り換えてきた人から顧客を奪う。後に湘南新宿ライン、埼京線方面やりんかい線、京葉線方面からのバス利用を奪う可能性もある。
一方の京急電鉄は、品川駅まで東京メトロ南北線を延伸した地下鉄でやって来る人たちに利用してもらう。都営三田線からの乗客も新規に受け入れる。京急空港線沿線を利用している人たちの利便性が向上する。蒲蒲線ができることにより、東急からの利用者にも便利な路線となるだろう。
東京モノレールは、中間駅の利用者を増やしていく。天王洲アイルや流通センターの利用者は、羽田空港の各ターミナル駅の利用者よりも多い。利用者こそ少ないものの、整備場や新整備場といった、空港で働く人たちに向けた駅もある。
それぞれが空港を目指して利用者を獲得しようとしつつ、実は上手にすみ分けている。この「すみ分け」こそが、空港アクセス3社のそれぞれの事業戦略である。羽田空港に向かうには、どこから行けばいいのか。利用者にとっては最も重要なことであるが、鉄道会社からすれば便利な路線を提供することが重要になる。
その意味では、空港行きのリムジンバスも大いに可能性がある。都心部からの利用が減っても、周辺部から乗り換えなしでダイレクトに羽田空港に行ける点は利便性が高い。コロナ禍で空港行きのバスは本数が減ってしまったが、コロナ禍が終わったら多くの人が再び移動するようになり、バスも元に戻るだろう。
羽田空港へアクセスする鉄道は、「すみ分け」と「競合」という複雑な関係の中で、コロナ禍が終わった後の世界都市・東京が発展する力になると考えられる。
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