サステナビリティを巡る世界の動きは非常に速く、企業は日々新たな対応が求められています。気候変動から自然資本、人的資本、サステナビリティ全般へと、情報開示の対象は拡大し、開示義務化の流れも世界的に加速しています。今後情報開示を充実させていくためには、組織変革も不可欠です。開示先行で変革を強いられている中、企業がサステナビリティ変革を受動的でなく能動的に変革を推進するにはどうすればいいのか。EYストラテジー・アンド・コンサルティングが7回に分けて解説していきます。
1本目:日本企業のサステナビリティ開示率9割超 なのに“場当たり的な”対応が目立つワケ
2本目:サステナビリティは事業成長を促すのか? ユニリーバや楽天、パタゴニアなどの事例を解説
3本目:ESG領域の開示要請が加速 息切れしない「サステナビリティ変革」をどう実現する?
サステナビリティへの対応が広範囲にわたる今、企業が独力でサステナビリティ変革を推進するには限界があります。これから企業がステークホルダーとともに意識を変えていくにはどうすればいいのか。
それには各ステークホルダーが同志として機能し、財務と非財務のトレードオフ関係解消に向けて取り組む必要があります。今回はステークホルダーとのサステナビリティ変革の共同推進の在り方を、CSV(Creating Shared Value=共通価値創造)の観点から解説します。
気候変動や生態系消失など多くの課題が山積みとなっている不確実な将来を乗り越え、企業が生き残っていくためには、経営を軸としたサステナビリティ変革が不可欠です。すでに非財務情報の開示の動きは本格化していて、CO2排出量、水質や土壌の汚染、生態系の破壊など企業が自然資本に与えるネガティブな影響のほか、2023年3月期からは有価証券報告書で人的資本に関する情報開示も義務化されるなど、これまで以上に企業が対応すべき課題は拡大しています。
しかし、対応すべき課題はそれだけではありません。金融機関や投資家、NGOに政府自治体からの脱炭素に向けたプレッシャーは親会社だけでなく、子会社や関連会社を含むサプライチェーン全体に広がっています。
TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)やTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)などの世界的な要請に対しては、日本でも上場企業を中心に積極的な取り組みを見せ始めています。それに伴って、大企業と取引関係にある地元中小企業も積極的な対応を試みています。
地方の金融機関でも、要請と同時に地元中小企業が対応できるようコンサルティングやサポートにも乗り出しています。こうして、いずれの企業も小手先の対応ではなく、本腰を入れた取り組みが求められるようになっているのです。
しかし、一般的にサステナビリティ変革は経済活動とトレードオフの関係にあるといわれています。また、ステークホルダーとの関係性的に、脱炭素移行に伴う負担が下請け中小企業に集中する懸念もあります。
例えば、商品製造を担う下請け中小企業があったとします。ステークホルダーである、エネルギー供給会社が再エネ拡大に伴い電力価格を値上げし、資材・部材供給会社が脱炭素資材購入に伴う値上げを実施した場合、コストの大幅増は避けられないでしょう。そんな中で、銀行からGHG(温室効果ガス)削減計画の策定要請があり、顧客企業からもGHG排出量可視化および削減を求められたとしたら……。かさむ費用が利益を圧迫する状態で、開示・削減要請に対応するのは無理難題だと分かります。
サプライチェーン全体での脱炭素化が求められる中、中小企業にしわ寄せが来ないようにするにはどうすればいいのでしょうか?
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