店員が客に激しく怒鳴られ、暴言を浴びせられる――。近年、顧客が過度な要求を突きつけるカスタマーハラスメント(カスハラ)の問題が深刻化し、メディアでも盛んに報じられている。こうした中、厚生労働省はカスハラ被害を疑似体験できるVR動画を制作し、企業などに活用を呼びかけている。どのような内容なのか。
店員「あ、またこのお客だ。やりにくいな」
客 「あんたほんと鈍いな。こんなに並んでんだよ」
店員「申し訳ありません」
客 「早くして。いい加減にしろよ。こっちはお客さまですよ? その態度は何」
コンビニで、店員に向かって威圧的な態度で振る舞う客。動画は店員の視点から撮られており、視聴者は暴言を浴びせられる店員の立場を疑似体験できるような作りになっている。1画面で360度映像として視聴でき、その場にいるような感覚だ。
「カスハラの被害に遭った側がどのように感じるのか、臨場感をもって体感し、自身の言動を見返すきっかけとなるよう動画を作成しました」。厚労省の担当者はこのように話す。
動画は厚労省がハラスメント対策総合サイトとして運営するWebサイト「あかるい職場応援団」で公開している。企業の人事担当者らに向け、社内でのハラスメント研修などで活用してもらおうと発信している。
この動画では、被害者である店員の視点に加え、加害者である客視点、それを見る傍観者の視点で撮られた場面もあり、視聴者はさまざまな立場からカスハラの問題を考えられるようになっている。
サービス業や小売業など、客と触れ合う機会が多い業種でよく起きるカスハラ。連合が2022年11月、直近3年以内に被害を経験したことがある1000人にアンケートを実施した調査では、76.4%が「出勤が憂鬱になった」「心身に不調をきたした」「仕事に集中できなくなった」などの生活上の変化があったことが分かっている。
厚労省は、実際に起きたカスハラ事例を元に動画で再現している。
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