近年は、おむすびの人気を聞きつけ、英国、ベルギー、ドイツからポップアップの誘いが舞い込んだ。そのうち、ドイツ・フランクフルトで22年2月に6日間のポップアップを実施し、約1000個を販売した。とはいえ、米国、フランスの店舗では1日2000〜3000個が売れるので、それと比較するとだいぶ小規模だ。
国によって反響の大きさは異なるものの、近年、海外における日本の米需要が高まっている肌感があると谷古宇氏。
「米国ではカリフォルニア米の価格が上がり、日本米と同等の価格で販売されている現状も後押しになっていますが、日本米はおいしいということに気付く人が、ここ2年ほどで増えた印象です。米系の寿司屋が日本米に切り替えたり、現地で日本米が多く売られるようになったり、といった変化が見られます」
おむすび権米衛では、減少する日本の人口に対して世界の人口が増えている事実に目を向け、海外のほうがマーケットが大きいと期待を寄せる。いずれは海外店舗を1000まで増やしたいという。
「優先順位が高いのは、大都市、かつ、お米がまだ主流ではないエリアです。ニューヨークでも物件は見続けていますし、出そうと思えば新店舗を出せる状態ではあるものの、足踏みしているのが実際のところです」
海外店舗を増やすにあたり、課題となるのは採用と育成だ。昨今の世界の潮流は手作りよりも機械化に流れているが、同社では可能な限り「人手」にこだわりたいという。とはいえ、働き手は誰でもいいわけではなく、理念への共感が求められる。
育成においては、座学に加え1000個ほどのおにぎりをむすぶ研修を経て、初めて現場でおむすびをむすぶことができる。個人差があるが、研修期間は約3カ月が通常だという。
加えて、「おむすび」という日本ならではの食べ物に対する規制が、それぞれの国や地域の自治体によりさまざまであり、関係機関と協力して販売ルールの統一化を図る必要があるそうだ。
ハードルはあるものの、じわじわとおむすび、及び日本米の存在感が海外で高まっているのは確かなようだ。寿司に変わる「日本食の定番」として、おむすびが世界中で知られる日が、いずれやってくるのかもしれない。
写真提供:おむすび権米衛
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