ローカル5G「安全神話」に異議あり 広がる導入に潜む誤解とリスク世界を読み解くニュース・サロン(1/3 ページ)

» 2023年06月15日 08時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]

 最近、「5G」のニュースを再びよく目にするようになった。

 もともと5G(第5世代移動通信システム)が「世界を変える」と大きな話題になったのは、商用利用がスタートした2020年のこと。政府の方針もあって、今では5G基地局の設置が広がり、一般ユーザーのスマホも5Gで通信できるのが当たり前になっている。ただその一方で、5Gの本当の恩恵を実感できない人が多いのではないだろうか。

5g 最近、再びよく目にするようになった「5G」のニュース(画像はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)

 実のところ、5Gの通信はわれわれ一般スマホユーザーなどが使う以上に、もっと小規模なエリアで効果的に利用されている。それは「ローカル5G」だ。これが急拡大しているDXとしてビジネスインフラを劇的に変える可能性が期待され、総務省や経済産業省も普及に邁進してきた。

 ローカル5Gとは、工場や施設などの内部だけで利用できる5Gの通信網を構築したもので、基本的に外部とはつながない設計になっている。5Gの特徴である超高速で超低遅延、さらに1平行キロあたり100万台の多数同時接続により、工場などでは生産が飛躍的に伸びる。接続コードなどは劇的に減り、遮蔽物に弱くてコントロールがしづらいWi-Fiの不安定な通信に頼らなくてもいい。

 これらを背景に国内外でローカル5Gの導入が広がっている。米カスタマー・マーケット・インサイツの報告書によれば、世界のローカル5Gの市場規模は、21年の約14億ドルから、22年は18億ドルに拡大したという。そして30年には418億ドルに急増すると見られている。

 しかし、である。当然そこにはセキュリティリスクが存在する。5Gもネットワーク通信なので、近年ますます活発化しているサイバー攻撃の脅威にさらされる可能性があるのだ。

 多くの人が誤解しているのは、ローカル5Gはパブリック(公衆)のインターネットに接続されない内部ネットワークなので安全だという考えだ。それは誤りである。

5g ローカル5G=安全、は誤り(画像はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)

 内部で使われるIoT機器はセキュリティ対策が施されていないことがほとんどなので、IoT機器の設定ミスや脆弱性といった一瞬の隙から内部ネットワークが攻撃されてしまうこともあり、Dos攻撃(サービス妨害攻撃)などを受ける可能性がある。そうなると工場などでもネットワークが遮断されてしまい、大損害を受けることになる。さらには施設で特許技術など知的財産が使われていると、サイバー攻撃によっては内部の情報が盗まれる可能性もある。

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