実はこれが「安いニッポン」の本質的な問題である。ブランド力もあるディズニーでさえ「混んでいるから高い」という感じで、これだけ叩く人がいる。一般の商品やサービスならばなおさらだ。
「もっと安くせよ」と騒ぐことは、自分にとって「得」のような錯覚をしている人も多いが、実はそれは「労働者をもっと安くこきつかえよ」と叫んでいるのと同じだ。
そして、その叫びは「低賃金・低成長」というブーメランになって、われわれの脳天に突き刺さっている。「もっと安くせよ」と企業に求める消費者は、その理由に「給料がちっとも上がらない」ことを挙げることが多い。しかし、低賃金というのは政治が悪い、消費税が悪いとかいう国家天下の以前に「異常なまでに安さを求める国民が悪い」という自業自得的な部分も多々あるのだ。
こういう負のスパイラルに日本社会全体が気づかない限り、「安いニッポン」という悪夢は終わらないのではないか。
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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