マーケ戦略の良し悪しは「何で」決まるのか? 「筋の良い戦略」が描けない理由トライバルメディアハウスのマーケ戦略塾(1/3 ページ)

» 2023年07月12日 08時00分 公開
[池田 紀行ITmedia]

連載:トライバルメディアハウスのマーケ戦略塾

「思うように売り上げが上がらない」「マーケティングが効いているのか効いていないのかわからない」理由の多くは、戦略が論理的に組み立てられていないことに起因しています。本連載では、マーケ戦略策定に潜む10の落とし穴とその解決法を解説していきます。どうすれば「筋の良い」マーケティング戦略を組み立てることができるのか?――トライバルメディアハウスのマーケ戦略塾、開講です。

戦略とは何か

 マーケティングの現場では「新商品のプロモーション戦略を考えよう」「PR戦略を強化して露出を増やそう」「CRM戦略でLTVを向上させよう」など、あらゆる場所や場面で「戦略」という言葉が登場します。

 戦略と名の付くものには「経営戦略」「成長戦略」「競争戦略」「アライアンス戦略」「人事戦略」「財務戦略」「マーケティング戦略」「CRM戦略」「広告戦略」「PR戦略」「SDGs戦略」「DX戦略」「戦略思考」「キャリア戦略」「人生戦略」など実にさまざまなものがあります。中には「戦略」というより「戦術」だったり、単なる「目標」だったり、はたまた「考え方」や「実行計画」に近い概念として使われるケースも少なくありません。

 言葉に「戦略」が付いているにもかかわらず全体像がボヤけていたり、「何をするのか?(=実行すること)」や「なぜそうするのか?(=理由)」がフワッとしたりしてしまう理由は「戦略」の定義そのものが曖昧だからです。

なぜ「筋の良い戦略」を描けないのか(画像:ゲッティイメージズより)

 そもそも、「戦略」とは何なのでしょうか。最新の『広辞苑 第七版』(岩波書店)では、下記のように定義されています。

せん・りゃく【戦略】(strategy)

戦術より広範な作戦計画。各種の戦闘を総合し、戦争を全局的に運用する方法。転じて、政治・社会運動などで、主要な敵とそれに対応すべき味方との配置を定めることをいう。出典:『広辞苑 第七版』

 この定義から、戦略とは競争相手と戦い、勝利するための「全体的」な「資源配分」を決めることであると分かります。

 仮にあなたの会社が持つ経営資源が無限なら、戦略は必要ありません。あらゆる場所で「全張り」すれば良いからです。でも、そんなことあるはずがありません。実際には、特定商品やサービスに投下できる資源(資金や労力など)には限りがあります。限られた経営資源の中で「何かを実行する」ことは「何かを実行しない(できない)」ことと同義です。

 つまり戦略とは、常に資源配分におけるトレードオフの選択であり、逆に言えばトレードオフではない戦略は「戦略になっていない」ということでもあります。

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