シートやコックピット全体が可動して、車体に発生する加速度や角速度を再現してくれるモーションシムが、ドライビングシミュレーターとしては最終形とされているが、加藤監督はモーションシムには否定的だ。
「クルマがスライドするような動きを再現させても、可動域に限界があるのでそこで止まってしまう。動きが不自然すぎるんです」(加藤氏)
またレーシングドライバーの中にもレーシングシムを練習やコースを覚えるために利用している人は多いが、モーションシムではクルマの動きを再現しようとしても遅延が避けられず、練習用としては使えないという意見が多い。
クルマの運転をドライビングシミュレーターより先に覚えた50代以上の世代は、ゲームでもクルマの挙動を感じ取りたいとモーションシムへの関心が高い。一方、ゲームからクルマの運転に入った若い世代は、シートやコックピットが動いて挙動を再現することには、それほど重きを置かないようだ。
レーシングシムを含むドライビングシミュレーターには、ほかにも使い道がたくさんある。ペーパードライバーや高齢ドライバーの運転練習にもリアルなシミュレーターとして利用できるほか、高齢ドライバーについては、単純に運転を楽しむ「移動しないクルマ」として利用してもらうこともできる。
運転することでストレス発散や運転能力の維持など安全に行えるのは、メリットとして小さくはないだろう。クラシックカーや超高級車などをサーキットやラリーイベントで走らせて楽しむ富裕層にもドライビングシミュレーターは練習には打ってつけだ。
トヨタ系のディーラーなどが運営するカスタマイズショップ、GRガレージではレーシングシムをショールームに設置しているところが多い。シムソフトやコックピットのレベルはさまざまだが、運転好きの興味をそそることで来店機会を高めるよう努めている。
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