グランツーリスモの運転スキルは、実戦でどこまで通用するのか高根英幸 「クルマのミライ」(6/6 ページ)

» 2023年07月16日 08時00分 公開
[高根英幸ITmedia]
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初戦は出来過ぎな好成績、来年以降も続く育成プログラム

 話をマツダのチャレンジプログラムに戻そう。

 もてぎでの初挑戦は、ライバルチームらがガス欠でストップするという事態もあり、なんとクラス3位に入賞した。13台と最も参加台数の多いクラスで、この成績は立派なもの。加藤監督も上出来と笑い、喜びを隠さなかった。

マツダ・ファン・エンデュランスは、マツダ車ならほとんどのクルマで参加できる耐久レースのシリーズ戦。取材当日は第2戦が栃木県のモビリティリゾートもてぎで開催された。参加台数が多いのはスポーツカーのロードスターやコンパクトカーのデミオだが、アテンザワゴンなども参戦し、にぎわいをみせた(出典:マツダ)
表彰式での笑顔の4人。初戦で3位入賞は出来すぎだけに、達成感を味わったことだろう。左から南澤拓実選手、深谷諄選手、加藤達彦選手、三宅陽大選手

 マツダのチャレンジプログラム「バーチャルからリアルへの道」では、選ばれた9人のグランツーリスモ上位プレイヤーが、リアルな耐久レースにメンバーを入れ替えながら何度も挑戦する。今回は作戦がハマったこともあり、激戦クラスで3位の成績を得られたが、今後はそうそううまくいくとは限らない。

 けれどもゼロからグランツーリスモで運転スキルを磨き、勝ち上がってきた彼らであれば、ハプニングも経験となり、柔軟に吸収していける気がする。走るのが好きで、バーチャルの世界で切磋琢磨してきたのだから。これからが楽しみだ。

 「将来、こうした活動の中からレーシングドライバーに成長するケースが出てきて、マツダのチャレンジプログラム出身というドライバーが増えたらいいな、という思いがあります」と、マツダのカスタマー本部でこの「バーチャルからリアルへの道」の運営を行う油目雅史氏は語る。

 秋にはまたMAZDA SPIRIT RACING GTCUP 2023が開幕する。バーチャルからクルマ愛好家を育てるマツダのチャレンジプログラムは、これからも続いていく。こうしてユーザーを育てる取り組みは、これからの日本においては幅広い職種で必要とされる活動だろう。

筆者プロフィール:高根英幸

 芝浦工業大学機械工学部卒。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。これまで自動車雑誌数誌でメインライターを務め、テスターとして公道やサーキットでの試乗、レース参戦を経験。現在は日経Automotive、モーターファンイラストレーテッド、クラシックミニマガジンなど自動車雑誌のほか、Web媒体ではベストカーWeb、日経X TECH、ITmedia ビジネスオンライン、ビジネス+IT、MONOist、Responseなどに寄稿中。近著に「ロードバイクの素材と構造の進化(グランプリ出版刊)、「エコカー技術の最前線」(SBクリエイティブ社刊)、「メカニズム基礎講座パワートレーン編」(日経BP社刊)などがある。


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