なぜ「プリウス」が標的にされるのか 不名誉な呼び名が浸透している背景高根英幸 「クルマのミライ」(2/7 ページ)

» 2023年07月30日 08時00分 公開
[高根英幸ITmedia]

プリウスというトヨタの金字塔にある問題点

 トヨタはプリウスというクルマを燃費性能だけに特化させたハイブリッドカーから、総合性能を高めたクルマへと成長させてきた。

 しかしながらドライバーのほうが、クルマの進化に追いついていない部分もある。プリウスをはじめトヨタのハイブリッド車のシフト機構は、セレクターレバーとプッシュスイッチを組み合わせたものになっている。セレクターレバーとは、NレンジからDやRレンジにシフトするためのもので、停止時はPレンジのボタンを押す仕組みになっている。

 通常時であればこの操作方法でも問題はないが、ドライバーがパニックに陥ったときはどうなるのか。例えば、急発進などで衝突事故を起こしてしまったら、咄嗟(とっさ)に行動するのはセレクターレバーの操作(ブレーキを踏んでいると思い込んでいるので、他にできる操作としてシフトに手がいく)だ。

 そして運転を長年してきたドライバーほど、従来のシフト操作が体に染み付いていて、セレクターレバーだけを操作しようとするだろう。それにより前後進を繰り返す暴走事故となってしまう可能性が高い。

トヨタ新型プリウスのセンターコンソール。セレクターレバーとボタンによりシフト操作を行う。セレクターレバーはDレンジやRレンジにシフトしても中立位置に戻るようになっていて、選択したレンジが分かりにくい。それでも従来はインパネシフトだったレイアウトからフロアシフトとなり、Pレンジも存在がより強調されたデザインとなっている

 またトヨタは駐車時のシフトミスによる急発進、急加速を抑制するドライブスタートコントロールという安全装備を多くの車種に搭載している。これはアクセルペダルを踏み込んだままRレンジからDレンジへとシフトした場合、エンジン出力を抑制して急発進を防ぐ制御を行うという機能だ。

 しかしそれならばブレーキを踏んでいないとシフト操作を受け付けないようにするべきで、Nレンジからのシフトには安全機構が組み込まれていない点が、問題ではないだろうか。

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