なぜ「プリウス」が標的にされるのか 不名誉な呼び名が浸透している背景高根英幸 「クルマのミライ」(4/7 ページ)

» 2023年07月30日 08時00分 公開
[高根英幸ITmedia]

安全性を高めても現行法では限界がある

 だが、どんなにクルマ側の安全性を高めても現行法では限界がある。

 国土交通省のASV推進計画でも、この問題が議論されている。ASVとは先進安全自動車の略で、70年代から国家機関と自動車メーカーが衝突実験などを経て研究することでクルマの安全性を高めてきた。古くはESV(実験的安全自動車)と呼ばれ、交通事故死者の低減に効果を発揮した。

 そうした思想が90年代に受け継がれる形で、クルマの安全性を高めるための施策としてASV推進計画が立ち上がったのだ。ESVは衝突安全性に特化した試作車であったのに対し、ASV推進計画はクルマの安全性を総合的に高める施策で、量産車へ盛り込む技術の導入を検討、促進させるものだ。

 最近はADASや自動運転ばかりが安全技術の要のように思われているが、そうした安全技術はすべてASV構想の中に組み入れられているものであり、より安全なクルマを目指して進化を続けている。

 だが、どんなに安全装備を充実させても、作動中にドライバーが操作を行えばオーバーライドによりADASの制御が解除されてしまう以上、クルマ側でできる安全対策は限られている。

 2021年度よりASV推進計画は第7期に入っているが、ドライバーの誤操作に対して車両側の制御を優先させることが可能かが検討課題となっている。これは法改正を伴う問題だけに慎重な議論が必要だろう。

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