なぜ「プリウス」が標的にされるのか 不名誉な呼び名が浸透している背景高根英幸 「クルマのミライ」(5/7 ページ)

» 2023年07月30日 08時00分 公開
[高根英幸ITmedia]

教習所の有効活用を考える時代に

 この半世紀にも及ぶクルマの進化は、免許を取りやすくした環境とともに、ドライバーに運転の責任感を希薄なものにしている。つまりプリウスに限らず、日本のドライバーの多くは退化している。クルマが進化しているのに対して、反比例しているかのように。

 それは便利さ、手軽さばかりを求めて、クルマの運転という行為の責任がいかに重大なものであるか、忘れてしまっているのだ。そんな人たちがプリウスなど燃費や快適性に優れたクルマに乗れば、その便利さや快適さ、経済性を享受するだけでなく、ますます運転について真剣に向き合うことはなくなる。

 サポカー限定免許(安全運転支援装置が搭載されたクルマのみ運転できる)を新設しても、選択するメリットがない現在はなかなか普及しにくい。であれば、今後は高齢ドライバーに半ば義務つけるようにして、サポカーもしくはMT以外のクルマに乗りたいドライバーは限定解除の試験を受けるようにしたほうが合理的ではないだろうか。

免許更新時の審査も厳格化していく時代に入った(提供:ゲッティイメージズ)

 免許更新時の審査も今後は徐々に厳格化していくことが必要だろう。75歳以上の交通違反者には更新時に実技検査が義務付けられたが、やがては高齢者全員に実施するようにしたほうがいいし、高齢者以外の一般ドライバーも交通違反者には更新時に実技試験や学科試験を課すようにするのが今後の理想的な流れだろう。

 高齢化による身体能力の低下は気付きにくいし、認めたくないものだ。免許を返納してしまうと生活が不便、楽しみがなくなるなど自分の都合ばかりを考えて、運転免許本来の資格条件を忘れてしまう。

 そもそも運転免許は、運転する能力があると認められて許可されているものだ。ということは客観的に見て運転する能力がなければ、交通違反など犯してなくても運転免許の効力を失うこともあり得る。このことを考えなくてはいけない。

 それを弁護士や美容師、教員の免許などと同じように捉えてしまうのは危険だ。クルマの運転は、他人の生命を脅かす可能性があるだけに、自分の都合だけで利用を判断してはいけない。飲酒運転や薬物使用時の運転、疲労時の運転が禁じられているのは、その状態で正しい判断と操作ができないからであり、運転能力の衰えた高齢ドライバーの運転は、それに近いものと考えたほうがいいだろう。

 では、一度でもパニックになってしまった高齢ドライバーは運転免許を返納すべきだろうか。

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