マーケティング・シンカ論

【後編】明石ガクトに聞くTikTok売れの法則 認知施策は不要、「興味からズドン」で購買へ至るカラクリ(2/2 ページ)

» 2023年08月22日 08時00分 公開
[西田めぐみITmedia]
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 購入に至ってもらうには「クリエイターが信頼できる動画を投稿している」という前提が必要だが、コメントで形成されているコミュニティーを目にすれば不安は払拭できる。もともとクリエイター自体を知らなくても「コメントを見ると自分と近い存在の人たちがコミュニケーションを取っていることが分かります。『こういった商品で』『こんな使い方もできて』『良いものだからみんな買っている』という情報が1分足らずのショート動画で完結しているので、比較検討をする必要もなく、そのまま購入する――つまり『興味からズドン』となるわけです」(余頃氏)

 同じようにネットショップで口コミを確認してから購入する機会は多いが、TikTok含むSNSとの違いは「一人一人アイコンがある」(明石氏)ことだ。全てのコメントが信頼に足る情報であると感じられる、この効果は非常に大きい。

「マネして遊ぶ」TikTok “体験できる”動画マーケで広がる熱量

 動画2.0時代の動画マーケティングは「極めてテレビの延長線上にあるものだった」と明石氏は話す。YouTubeで入るCMや、たっぷり尺を使って芸人が商品を使って見せる動画などがそれで、情報の広がり方は「インフルエンサー型」と呼ばれる。一方でTikTokのようなショート動画は「シミュラークル型」であり、トレンドをみんなでマネして楽しむことで情報が拡散されていく。

photo ELCジャパンが実施した「M・A・C ロックド キス インク リップカラー」の体験PR施策。「#KISSぐらいじゃ落ちない」を使ったハッシュタグチャレンジで、TikTok上のエフェクトにより新作リップのタッチアップ体験ができた。人気クリエイターを多数起用(出所:ワンメディアHPより)

 「YouTubeは『○○さんかっこいいです』といったようなコメントが多く、投稿者が憧れの対象になりがちです。対してTikTokのコメント欄は友達との会話感覚になりやすく、投稿者との距離が近い。クリエイターとファンとの垣根が低いんです。これは、TikTokユーザーの半分以上が自身も動画投稿者であり、発信者と視聴者の差分がYouTubeほど濃くないためといわれています」(明石氏)

 そのため、TikTokはいろいろなユーザーが誰かの投稿をマネするシミュラークル型の情報流通構造になりやすい。こういう曲が流行っていて○○さんが躍っていたから僕も投稿してみよう、このマスカラがすごく流行っているから私も買ってメイク動画を投稿してみよう――こういった動画がTikTokにはあふれており、一度火が付けば計り知れない拡散力を発揮する。

 こういった熱量を生むために一工夫するなら、動画マーケティングに「ユーザーが参加できるような余白を作ることが必要」(余頃氏)だ。

 「昔はお茶の間でテレビCMを見るだけでした。でも完成し切った“作品”を投下するだけではユーザー体験の幅がなく、エンゲージメント向上の観点では何も数字が出てきません。私たちにお声がけいただくのは、すでにテレビCMをはじめとするマスメディアをやり尽くした企業さんが多いのですが、既存の映像マーケティングだけでは持続的なブランド成長は望めない、届けられないコミュニティーがあることに気付いたからこそ、動画マーケティングをスタートしています。

 お話ししてきたように、動画マーケティングの世界では自社商品に適したクリエイターやコミュニティーが強力な武器になります。それを発見し、生かすことができれば知名度がなく予算が少ない商品でも、一発逆転の可能性がある世界ではないでしょうか」(余頃氏)

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