正月の定番「おせち料理」の予約商戦が各百貨店で本格化する中、大丸松坂屋百貨店は売り上げ増加の一手として「冷凍おせち」に活路を見出だしている。コロナ禍で帰省が減少し、実家へのプレゼント品に選ばれるなど、ここ数年、売り上げが右肩上がりのおせち。関西・東海での販売が多くを占める同社にとって、配送エリアを問わない冷凍おせちの販売強化は、人口が集中する首都圏で存在感を高める大きな武器となる。トレンドを捉えた商品開発や客単価を上げるための販売戦略など、同社のおせち商戦の“今”を取材した。
同社の売り上げ目標は対前年比5%増。おせち売り上げは直近5年間で29%増加しているが、前年は人流が回復したこともあり、コロナ禍で大幅に売り上げを伸ばした反動で、対前年度比1.8%にとどまった。
そんな中、特に注力するのが「冷凍おせち」だ。同社の調査によると、冷凍おせちの売り上げが「飛躍的に伸びている」という。コロナ禍以降、感染防止で帰省する機会が一時的に減少し、実家におせちを送る習慣が定着したためだ。
従来のおせち(生おせち)は新鮮なうちに迅速な配送が求められる一方、年末年始の繁忙期は配送ドライバーも人手不足になりがちだ。冷凍おせちの販売増は冷蔵庫での自然解凍で食べられるという購入者側にとっての手軽さはもちろん、繁忙期に配送を分散できる点から販売者側にも一定のメリットがある。
「生おせちでは限界があったが、冷凍技術が進化し、効率的におせちを生産できるようになり、品質も安定した。とはいえ、冷凍に向かない原材料もあるので、そうしたものは生おせちに使用するなど、冷凍おせちと生おせちですみ分けする」(同社のおせちマーケ担当者)
同社の主要顧客は関西や東海地域が大半を占めているが、冷凍おせちは配送エリアを問わない。人口が多い首都圏の売り上げも伸ばし、自社のプレゼンスを高める狙いもある。
予約チャネルのデジタル化も進める。19年度の同社おせちの申し込み別売り上げシェア最多は「店頭」(49%)。「EC」は30%だった。これに対し、22年度はEC(47%)が店頭(35%)を逆転。コロナ禍でECが主戦場になっており「ECでどれだけ売るかが重要になる」(同社担当者)。今年は動画広告の強化などで、ECでの申し込み比率50%を目指す。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング