「あの商品はどうして人気?」「あのブームはなぜ起きた?」その裏側にはユーザーの心を掴む仕掛けがある──。この連載では、アプリやサービスのユーザー体験(UX)を考える専門家、グッドパッチのUXデザイナーが今話題のサービスやプロダクトをUXの視点で解説。マーケティングにも生きる、UXの心得をお届けします。
経済ニュースからテレビのバラエティ番組にまで取り上げられ、いまだに話題が絶えない生成AI。今日もビジネスの現場ではもっと有効な活用方法はないかと模索されており、生成AI自体も進化が止まる気配はありません。
あまたの可能性が示される中、今活用が進んでいるのが「インターネット広告業界」です。広告業界の老舗である電通と博報堂は、両社ともに生成AIを活用したサービス提供を早々に始め、その活用方法が話題となっています。
動画配信サービスやゲームアプリ、漫画アプリなど、多岐にわたるメディアで展開されるインターネット広告は「ユーザーにどうやってクリックさせるか」が最も重要な課題です。費用対効果を重視するため、さまざまなパターンを自動で作成できる生成AIとの相性が非常に良いのです。
一方で、ユーザー体験という観点では、強引にクリックを誘導するためだけの手法は好ましくないものとして扱われます。広告への印象が悪いと、サービス全体の印象にも悪影響を及ぼしやすいためです。
今回は、インターネット広告の中核をなすヤフーでデザイナーとしてキャリアをスタートさせた筆者が、インターネット広告の歴史を振り返りつつ、生成AIが広告とユーザーの関係性をどう変化させるのか、UXデザインの観点から考察していきます。
一般的に、広告は目的によって「獲得広告」と「認知広告」の2種類に分けられます。
商品の購入やサービスの申し込みを促す獲得広告は、特定の行動を起こすようユーザーに明確な呼びかけを行います。ユーザーが得られる利益やメリットを強調することが多く、クリックや登録の対価としての価値を伝えることに重きを置いています。
一方で認知広告は商品やサービス、ブランド、企業などの知名度や理解度、好感度を上昇させることが目的です。直接的な価値だけでなく、ストーリーを重視して、ユーザーと感情的なつながりを生み出すことで、長期的に関係構築できるように構成されます。
電通が1951年に刊行した「広告50年史」によると、国内での広告そのものの始まりは江戸時代前期にあたる「暖簾(のれん)」と「看板」だといわれています。元々は「そこにあるものが何なのか」を伝えることから、新聞や折込みチラシ、テレビや雑誌など広く「ものごとを伝え、認知を広げていく」存在として活用されてきました。
2000年になりインターネットが急速に普及していく中で、インターネット広告は驚異的な成長を遂げ、たった20年で総広告費におけるインターネット広告費の構成比は約4割を占めるほどになりました。
当然、インターネット広告にも認知広告と獲得広告の2種類がありますが、インターネットショッピングやサブスクリプションサービスの普及による後押しもあり、その場ですぐに購入・登録できる獲得広告の存在感が大きいように感じます。
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