内定者が入社直前に「辞退」 損害賠償請求はできる?Q&A これって違法ですか?

» 2023年11月01日 07時45分 公開
[ほしのあずさITmedia]

Q&A これって違法ですか?

「給与を上げろ」「残業を減らせ」「経費を減らせ」――日々現場と経営の板挟みで悩みが尽きない人事・総務担当者に向けて、リアルな疑問に答えます。回答者は、KKM法律事務所代表の倉重公太朗弁護士。

今回のお悩み

Q: 内定受諾していた内定者が、入社の3日前に「やっぱり入社しません」と連絡してきました。当社は新入社員を3人しか採っていないため、1人に辞退されると今後に大きく関わります。辞退した内定者を訴えることは可能ですか?

弁護士の見解は?

答え:訴えるのは難しいです。今後は内定者のエンゲージメントを高める取り組みをしましょう。

A: 訴えるのは難しいですね。新卒の場合は「職業選択の自由」が基本的には勝つからです。また仮に訴えたとしても、もしそれがニュースになってしまったら、翌年から誰も受けにきてくれなくなりますよね。実はこの悩みは、どの会社も抱えていることなのです。

 ただ、これがもしキャリア採用で、その新入社員のためにお金と時間をかけて、新プロジェクトや新たな研究を始める準備をしていたとしたら、訴えられる可能性はあります。

辞退 新卒の内定者が入社3日前に辞退 訴えられる?(出典: 写真AC)

 しかし、企業が新卒の内定者に対して何もできないわけではありません。内定を出した後、企業側は内定者のエンゲージメントを高める動きをすることが大切です。

 今回のような入社直前での辞退は、早期に内定を出した後に内定者を放置することで起きるケースが多いです。採用は内定を出して終わりではないし、入社して終わりでもありません。継続的に内定者に会い、入社直前までインターンや研修、懇親会など何らかの関わりを持つことが、内定辞退の防止につながります。

 中には入社してすぐに辞める新入社員もいますが、内定辞退と早期離職の防止は同じ話です。こういった人たちをつなぎとめるために、内定者と顔を合わせ、仕事のやりがいや会社の魅力、自社の仕事が社会的に持つ意味などを発信し、対話をしていくという地道な努力が必要になります。

 また継続的にインターンに入ってもらうのもいいでしょう。実際に仕事をやってみて「合うな」と思ってもらうことに意味があります。「働いている実感」を持った状態で入社してもらえることも大きいですね。

話を聞いた人:倉重公太朗(くらしげ こうたろう)

慶應義塾大学経済学部卒。KKM法律事務所 代表弁護士。週刊東洋経済「法務部員が選ぶ弁護士ランキング2022」では人事・労務部門1位を獲得。

第一東京弁護士会 労働法制委員会副委員長・労働法基礎研究部会部会長、日本人材マネジメント協会(JSHRM)副理事長、日本CSR普及協会理事を務める。著作は30冊を超えるが、最新作は『実務詳解 職業安定法』(弘文堂)。Amazonの著者ページはコチラ

労働審判・仮処分・労働訴訟の係争案件対応、団体交渉(組合・労働委員会対応)、労災対応(行政・被災者対応)を得意分野とする。企業内セミナー、経営者向けセミナー、人事労務担当者・社会保険労務士向けセミナーを多数開催している。


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.