ハイブリッドワークを推進してきた味の素だが、業績への影響はどうか。同社の直近3カ年の業績を振り返ると、21年度の売上高は前年同期比97.4%の約1.07兆円と微減するも、これ以降増収し23年度は約1.36兆円に着地している。事業利益はコロナ禍でも伸長を続け、23年度は1353億円を記録。堅調に推移している。
コロナ禍で内食需要が増加したことが、味の素にとって追い風に働いたことは事実だ。こうした外部環境を加味する必要はあるものの、同社の「生産性」も向上している。
味の素は17年度から、売り上げを人数と労働時間で割った「時間生産性」を算出しており、この数値はコロナ禍に入っても伸びている。リモートワークで対面のコミュニケーションが減ったにも関わらずである。
味の素はコロナ前からハイブリッドワークの環境を整えてきたが、それだけでは十分ではないという。新しい働き方を受け入れるために、社内のカルチャー醸成も意識したと福永氏は話す。
「出社しているから偉い、在宅勤務だから偉くない、という風潮にしてはならない。社員のライフステージや都合に合わせつつ効率的な手段を選べるよう、人事部長からメッセージを発信し続けた。
また、もともと面倒見の良い社員が多かったことも幸いだった。コロナ前は社内で食事に行く機会が多く、そういった時間を重ねることで仕事中も頼み事がしやすい関係性が生まれていた。出社する機会が減った今も、こうした良き文化は残していきたい」
人事部では最近新入社員が2人入社したが、すぐに歓迎会をセットして「ウェットな関係性」を作っていったと福永氏は話す。ハイブリッドワークの環境を整えることも重要だが、それと同じくらい生身の人間同士の関係を大事にしているということだ。どこでも働ける環境を整備しつつも、対面でのコミュニケーションも重んじるバランス感覚が、ハイブリッドワークで生産性を上げる秘訣なのかもしれない。
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