マーケティング・シンカ論

著名人を起用するより安く済んだ? 伊藤園のCMに登場したAIタレント その舞台裏SNSで反響(3/3 ページ)

» 2023年11月11日 05時00分 公開
[昆清徳ITmedia]
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CMの制作過程は?

 人間のタレントを起用する場合と比べて、CMの制作過程にはどんな違いがあったのだろうか。

 上條氏はAIタレントを活用するメリットとして、目的に沿った候補がスピーディーに提案される点を挙げる。「こんなイメージのキャラクターにしたい」と要望を出した場合、いくつかの候補が翌日には出てくるといったイメージだ。

 社内の関係部署や外部の制作スタッフらと議論し、さらにブラッシュアップしようとした場合、新しいAIモデルの案がすぐに出てくるので、作業効率が高かったという。

 今回のCMの総制作期間は約5カ月で、AIタレントの検討には1〜2カ月を要したという。

 著名なタレントをCMに起用すると、多額の出演料がかかるというイメージがある。そうした場合と比べ、AIタレントを起用したことでコスト的なメリットはあったのだろうか。その点を尋ねると、上條氏は「総コストはそれほど変わらなかったのではないか」と回答した。仮に、AIが提案してきたモデルを即決したのなら、総コストを抑えられた可能性がある。しかし、実際の提案回数は1回ではなかったし、社内外のスタッフと何度も議論した。制作過程には多くの人が関与している。

 9月6日にテレビCMを放映した後、どのような反響があったのか。上條氏は「ここまでAIでできるのか」という驚きの声が最も多いようだと分析する。インフルエンサーが取り上げたことも、大きく影響した。

 テレビCMの大きな目的は、「お〜いお茶 カテキン緑茶」の認知度を向上させるとともに、商品を実際に手に取ってもらうことだ。発売してから日が浅いので、売り上げや認知度に与えた影響を正しく評価するには、さまざまな検証が必要になる。本来は新商品とAIタレントを一緒に認識してもらうのが好ましいが、現時点では「伊藤園とAIタレント」という印象を持つ人が多いようだ。

 今後、AIタレントを活用する動きはどんどん広がっていくことが予想される。伊藤園のテレビCMは、同社の広告戦略にどのような影響を与えていくだろうか。

CMのAIタレント
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