同じようなことが「事例の収集や分析」でも発生しています。どの業界に属する人も、事例が大好きです。
メディアやセミナーでは「◯◯の成功(失敗)事例に学ぶ」「プロモーションの成功事例10選」「最新事例レポート」などが大人気。みんな「聞けば(読めば)すぐに分かる具体例」を欲しているのです。
私も年間50回以上の講演や講義をしますが、事例を話せば話すほど事後アンケートの満足度は高くなります。アンケート満足度だけを高めるなら、多くの事例を紹介すれば良いので苦労はありません。しかし私の講義は事例が少なめです。なぜなら、いくら事例を学んでも、再現可能性は高められないからです。
広告、PR、マーケティング業界には、膨大な数の過去事例に精通する「事例博士」のような人がいます。どんな話題でも「あ、それは◯◯社の事例に似ていますね」「◯◯の事例では成功していましたよ(成功しませんでしたよ)」など、とにかく過去の事例に当てはめて話を展開する傾向にあります。しかし、厳しいことを言うと、事例博士はあまり仕事ができません。理由は、自分の頭で考えないため「事例の焼き直し」しかできず、自社の業務で成果を出せないからです。
繰り返しますが、マーケティングの目的は「消費者に買っていただくこと」であり、マーケティングコミュニケーションの目的は「消費者に買っていただくために、意識や態度を変えること」です。
A社の成功事例は「A社特有のマーケティング課題やマーケティングコミュニケーションの課題を解決するために実施した施策によって、A社の課題が解決した事例」です。その成功事例はA社の商品特性、強みや弱み、競合環境、使える予算、顧客基盤、時流やタイミングなどが合致したから成功したのであり、B社がそのまま真似(まね)てみても、前提に違いがありすぎてうまくいくはずがないのです。
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