ガイドラインの策定において、PTが意識したのは「べからず集」ではなく、前向きなルールを作ることだった。行政が作るルールといえば、禁止事項を網羅した堅いイメージが思い浮かぶが、「それでは職員の利用が進まないのではないか」とPTのメンバーは考えた。
リスクを押さえつつも、ルールに沿って、積極的に生成AIを利用するためのガイドラインを作る、という目的を共有した上で議論を進めていった。完成したガイドラインでは、シンプルに「職員が守るべきルール」として4項目を提示した。
形式やデザインにもこだわった。行政文書はWordを用いた縦長の資料が多いが、ガイドラインはPowerPointを用いて、横長の体裁に仕上げた。「デジタルサービス局では横向きを好む職員が多く、印刷もしないため横向きの方が見やすい」(大迫さん)
職員向けのガイドラインではあるが、都民にとっても分かりやすい内容となることを心がけた。「職員が安全な利用を進めていることが分かれば、都民にも安心してもらえる」(大迫さん)
PTは、生成AIをどういう業務に使えるか? という観点で職員とアイデアを共有する「アイデアソン」も複数回にわたり実施してきた。
「アイデア出しやベストプラクティスを調べるのに使えそう」
「AIはたまに間違える。間違いを見抜ける仕組み作りが必要」
6月から生成AIを先行導入してきたデジタルサービス局の職員からは、さまざまな声が挙がった。こうした声をもとに、PTは行政での利用に「向いているもの」と「不向きなもの」を整理。「文書作成の補助」「アイデア出し」「ローコードなどの生成」には向いているが、「検索」「数学的な計算」などには不向きだとガイドラインで提示した。
8月の全局導入から約3カ月。現在、日常的に業務で生成AIを利用している職員は約1割。用途は文章作成、校正、要約、アイデア出しが大半を占めているという。独自の用途を試みる職員も出てきているといい、例えば(1)相手に失礼のないようなおわび、おことわりのメール文案を作成する、(2)異動先で引き継いだExcel資料の関数・数式をプロンプトに記入し動作を確認する、(3)送信前のメール文面に誤字脱字がないか確認する――などの例が出てきているという。
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