生成AIを導入した企業や自治体からは、成果として「業務時間の短縮効果」がよく挙がる。都でも利用した職員の約6割が10〜30分の時短につながった――という調査データがあるといい、確かに生成AIの時短効果は大きい。
一方で、大迫さんは、時短効果以外の価値も大きいと指摘する。
一つは、自分では思いつかない発想やアイデアが得られるという点だ。
行政職員が扱う公的業務には、マニュアル通りに進めていく必要がある業務も多い。そういった業務にふと疑問を抱いて上司に質問しても、納得のいく回答が得られないこともある。こうした疑問を生成AIに尋ねると、箇条書きで整然と理由を挙げて、明瞭な回答が返ってくる。こうした使い方をした職員からは「自身の業務に納得感を得て進めることができた」と話したという。
大迫さんが挙げるもう一つの手応えは、職員のITリテラシーの向上だ。今後、既存のさまざまなサービスに生成AIが組み込まれていくことが想定される。代表的なものでは、WordやExcel、PowerPointなどの既存ソフトに導入し、必要な指示を出すことで文書やプレゼン資料などが短時間で作成できるMicrosoftの「Copilot」(コパイロット)などがすでに登場している。
「いかに明確なプロンプトを書けるかが、今後の業務の進め方に大きく影響してくる」(大迫さん)。今、業務で生成AIに慣れることでITリテラシーを身に付け、それが将来に生かせるのではないか、という期待を持っているという。
とはいえ、全体としてはまだ活用方法は限定的。「プロンプトを工夫してもっと業務に使いこなせるようにしていきたい」と大迫さんは話す。
そこで、都は11月から約10回にわたるアイデアソンをスタートさせた。行政での活用方法についてアイデアを出し合うほか、プロンプトをブラッシュアップするための方法について、外部講師も招いて学ぶという。年明け以降、アイデアソンの成果として、行政利用に特化したプロンプト集または事例集の作成・公表も予定している。自治体業務における生成AI利用の幅が、これまで以上に広がっていきそうだ。
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