渋谷駅にサラダ自販機を設置して、見えてきた「0.13%」の数字水曜日に「へえ」な話(3/5 ページ)

» 2023年12月06日 08時30分 公開
[土肥義則ITmedia]

ダイナミックプライシングを導入した背景

 そもそも、なぜダイナミックプライシングを導入したのか。賞味期限が長い缶ジュースと違って、サラダは短い。となると配送頻度が高くなって、そのぶん商品の価格も高くなってしまう。利益を確保するためには、廃棄率をできるだけ下げたい。いやいや、いまのご時世を考えると、下げなければいけない。このような狙いがあって、商品の価格を変動させることにしたのだ。

 結果的に廃棄率が下がるだけでなく、売り上げも伸ばした。となれば、このような疑問がわいてくる。「他の飲料メーカーも導入すればいいのに。いや、そもそもなぜこれまで導入してこなかったの?」と。ちょっと調べたところ、ダイナミックプライシングの導入に“二の足”を踏んでしまう事情があるようだ。

コールドプレスジュースは午前中によく売れるそうだ

 夏の暑い日に、冷たいジュースの価格を高くすれば、もうかりそうだ。例えば、気温が30度を超えれば、1本120円で販売しているジュースを、150円にするのはどうか。会社側の目線に立てば、1本当たり30円のもうけになるので、うれしいはずである。

 一方、消費者の目線に立てばどうなるのか。普段、1本120円で買えるジュースが、30円も高くなる。「同じモノなのに、なぜ高いの?」といった感情が生まれて「値上げするのなら、別の自販機で買うよ。なければ近くのコンビニで買うよ」となるかもしれない。

 消費者の頭の中で「缶ジュースの価格は〇〇円」とほぼ決まっている。こうした商品の価格を、自販機で変えることは難しい――。業界でこのように語られているようだが、サラダの場合は違う。スーパーやコンビニで同じモノを売っていないので、価格を比較するのが難しい。

 また商品によって、鮮度が違う。というわけで、お客は「この野菜が入っているし、新鮮だし、ちょっと高くてもいいかも」といった形で受け入れやすいのかもしれない。

 サラダ自販機のダイナミックプライシングはいまのところうまくいっているようだが、飲料メーカーもこのまま黙っていないようだ。コカ・コーラボトラーズジャパンは8月、自販機でダイナミックプライシングを導入すると発表した。

 とりあえず試験的に始めてみて、うまくいけば本格的な展開を考えているようだが、どうなることやら。この行方は、ちょっと気になるところである。

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