新時代セールスの教科書

「営業活動はSalesforceで全て完結」 ツール活用を100%社員に徹底させる方法業績は右肩上がり(1/3 ページ)

» 2023年12月15日 07時30分 公開
[大村果歩ITmedia]

 営業DXの必要性が叫ばれる中、CRM(Customer Relationship Management、顧客関係管理システム)やSFA(Sales Force Automation、営業支援システム)を導入する企業が増えてきた。顧客データを一元管理し、営業活動を可視化する動きが加速している。

 しかし「せっかく高額を払ってツールを導入したのに、現場の営業が全然使ってくれない」と悩む企業が多く存在するのが現状だ。忙しい営業パーソンにとって、日々ツールに営業活動のあれこれを記録するのは、正直面倒くさい――。

Salesforce (出所:ゲッティイメージズ)

 営業ツールをいかに現場で使ってもらうかに苦心する企業が多い中、全営業がSalesforceを使いこなし、月に約200社の商談をこなしながら右肩上がりの成長を見せる企業が存在する。アイティメディアのグループ会社で、システム開発案件紹介サービス「発注ナビ」を提供する発注ナビ(東京都千代田区)は、「営業活動を全てSalesforce上で完結させる」仕組み作りを実現している。

 発注ナビはなぜツール活用率100%の組織を作ることができたのか。営業部の仙北裕規部長とマーケティング&サービス統括部 マーケティング部の谷本祐さんに話を聞いた。

5つのボードで管理 Salesforce活用術

 発注ナビはシステム開発案件を「発注したい法人」と「受注したい法人」のマッチングサービス。2023年6月現在で4000社を超えるシステム開発会社が加盟している。

 同社の営業部隊では、開発会社に対して発注ナビへの加盟を提案している。

 インバウンドの問い合わせ経由で新規顧客を開拓するケースが多いが、企業側から問い合わせがあるからといって、全てが受注につながるわけではない。適切なタイミングで提案ができるよう、Salesforceで各顧客のフェーズやWeb上の行動などを分析し、受注率アップに努めている。

Salesforce 発注ナビのビジネスモデル(公式Webサイト)

 同社では、Salesforce上に5つのダッシュボードを作成し、アポ獲得〜成約を効率的に管理している。

(1)行動管理DB

 各営業パーソンの行動量を管理するためのデータベース(以下、DB)。日次、週次、月次で各メンバーの行動数を見える化することで、進捗の遅れなどが一目瞭然になるようにしている。

 「必要アポ数やアポ獲得率から逆算し、架電数や顧客接点数をKPIとして置いています。よく『量より質』という人がいらっしゃいますが、私は『量から質』だと考えています。量が足りていない人が質を求めても絶対に良い結果は現れません。この考えを原理原則として、常に量はチェックできる体制を敷いています」(仙北さん)

(2)在庫管理DB(数の管理)

 商談(見込み客)の数を見える化しているデータベース。

 同社ではこれまで、直近の見込み客は管理できていたものの、長期追客になった見込み客の管理がずさんで、いつの時点でどれだけの見込み数があればよいかという傾向が分かりづらいという課題があったという。「直近の見込み」「時期先の見込み」(長期追客の顧客)、「商談前見込み」(アポ取得済みの顧客)の3つのステータスに分け、それぞれの数の推移をスナップショットで管理している。

 「各ステータスの平均の受注率を算出し、3つの在庫数の合計から着地予想数字と目標とのギャップを判別することで、必要なアクションをチーム内で統一できています。

 特に注視しているのはスナップショットで、1週間単位で見込み客の推移を確認しています。例えば、月末月初は受注失注の連絡が多い時期なので、見込客数は減少します。そこから右肩上がりで見込み客数を増やさなくてはいけないので、進捗を都度確認し、ビハインドの場合は『現状の見込み客数だったら○○円くらいに着地してしまうので、行動量をこれくらい増やさなくてはいけないよね』などと、具体的な対策を議論できます」(仙北さん)

(3)受注管理DB(金額の管理)

 受注金額を予測し、目標とのギャップを認識するためのDB。Salesforce内のAI機能「Einstein」を使い、商談相手の役職や流入経路、現状ステータスなど、過去のデータから受注率を予測するロジックを組み込み、自動で着地数字を算出している。

(4)アプローチ漏れDB

 主に「時期先見込み」(長期的に追客したい企業)のWeb上での行動をトラッキングし、熱い顧客に対して漏れなくアプローチできているかを管理するDB。

 「最終アプローチから30日以上経過した企業が『サイト訪問』『営業資料閲覧』『管理画面ログイン』のいずれかのアクションを起こした場合に担当者に通知を飛ばし、そこでアクションが起こせているかを管理しています。このDBは常に0(漏れがない状態であれば0になる)が望ましいため、管理者を任命して、毎日のチェックと報告を義務付けています。

 今までは通知は行っていたものの、その後の行動に関してはメンバー任せになっており管理ができていませんでした。Salesforce社との定例会で提案してもらい、同社が使用しているDBと同じような仕様で作成しています」(仙北さん)

営業施策効果DB

 四半期に1度の頻度で実施するキャンペーンを管理。現在進行中のキャンペーンの進捗(案内総数・担当通電数・アポ数・受注数・受注率)を確認できる。

 また、ワンクリックで過去のキャンペーンの数字が表示されるため、以前のキャンペーンと何が違うか容易に比較ができる仕様にしているという。

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