「営業のエース」退職で大混乱 「天才」に頼らない組織どう作る?(2/2 ページ)

» 2023年12月25日 07時30分 公開
[和賀成哉ITmedia]
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「エース」がいなくても「優秀な組織」になる方法

 属人化企業のリスクを、Qで上げた例「営業のエースが辞めた」場合で考えてみます。

 退職したエースは売り上げの大半を担っていましたが、クライアントのことが共有されておらず他の人が業務を引き継ぐことができません。この状態は1人の社員に売り上げやオペレーションが依存している状態であり、組織として非常に不安定です。その人が担当していたクライアントは離れていく可能性が高いため、企業の売り上げも大きく下がります。

 また、残された社員には良好な結果を出すための営業のノウハウが残されていないため、個人の経験や勘に頼らざるをえなくなります。それでも、ごく一部の「優秀な社員」であれば良好な結果を出せると思いますが、多くの「普通の社員」が良好な結果を出すことは困難な状態です。

 属人化から抜け出すために、まずは仕事のスキルやノウハウを蓄積する「仕組み」を作ることから始めるとよいでしょう。

 営業活動の仕組み化や標準化をして、「普通の社員」が、特別なことをしなくても良好な結果が出せるよう取り組んでください。

 具体的には、これまでの成功事例から営業プロセスを統一化する(新規アプローチ、既存アプローチ、ヒアリング内容及び方法、見積提示、契約に至るまで)、営業資料を統一する(サービス案内資料、提案資料、見積書、請求書、契約書、カタログなど)、トークスクリプトを作る過去の成功事例と失敗事例をいつでも全社員が閲覧できるようにする――などがあります。そのための評価の仕組みも必要です。

 どんな企業にも必ず創業者がいて、社会に向けて実現したいことなどを「企業理念」に掲げ、事業を興します。その企業理念に共感して集まってくれた多くの「普通の社員」が良好な結果を出せるような仕組みを作れれば、たとえ「優秀な社員」がいなくても「優秀な組織」になれます。ぜひ「優秀な組織」になって、企業理念に掲げる思いを実現してほしいと思います。

著者紹介:和賀成哉

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2007年11月に不動産業界から転職して社会保険労務士法人大槻経営労務管理事務所に入所。

入所以来、主に5000名超の大企業を中心にアウトソーシングサービスに従事し、2016年1月 大規模法人アウトソーシング事業部の部長に就任。

2017年3月 業務執行役員に就任。

2021年4月 OS局局長に就任。人事担当者向けの労務講座「オオツキ塾」の講師や管理職研修の講師も行う。


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