マーケティング・シンカ論

「俺たちのワークマンが変わってしまう」をどう解決? ファンが離れないブランド作り(2/4 ページ)

» 2024年01月11日 08時00分 公開
[ほしのあずさITmedia]

俺たちのワークマン問題 どう乗り越えた?

濱屋: 「昔ながらの街の作業服屋さん」というのが、もともとのワークマンですよね。ですが、今は職人さんの人口自体が減ってきていて、このまま作業服一本では売り上げが見込めないよねという話が出るようになりました。

 そんな中、趣味でバイクに乗っている一般の人が、ワークマンの防水・防寒のウェアを「安価なのに温かくて良い」と紹介してくれたんです。

 またコックさんが厨房で履く水や油でも滑らない靴があるんですけど、こちらも「雨の日でも滑らない」と妊婦さんの間で話題になったんです。そういう声を通して、これまで職人さんに向けていた商品も、一般のお客さまに広げていけるのではないかと考えるようになりました。

 そこからワークマンプラスが誕生し、レディースやジュニアにも広げようと拡大。今では、#ワークマン女子というレディース商品が豊富な店舗も展開しています。

 今年、機能性以上にデザインやファッション性を重視した、ワークマンColorsという新業態店舗を銀座にオープンしました。今後はZ世代が中心になりますので、若い世代をターゲットにした店舗を広げている最中です。

司会: ワークマンプラスとワークマンの違いは何でしょうか? また業態を広げた結果、来店するお客さまの属性も変わりましたか?

濱屋: 街のワークマンとワークマンプラス、#ワークマン女子で売っているアイテムは、ほとんど同じなんです。お店の外観が違うだけで、職人さんが行くワークマンにも、実はショッピングモールで売っているアウトドアウェアが並んでいます。

 同じ商品を見せ方を変えて売っているだけなので、特別コストがかかっているわけではありません。

 業態を広げた結果ですが、最初は「俺たちのワークマンが変わってきている」「仕事帰りに汚れた作業着で入りづらくなった」など、俺たちのワークマン問題として話題になりました。

 ですが、私たちにとって職人さんは大切なお客さまです。#ワークマン女子の店舗を増やすことにより、一般のお客さまは#ワークマン女子に集中するようになりました。結果として、職人さんが入りやすいもとのワークマン作りにつながったのです。

 それと並行して、ワークマンプロという職人さんにスポットを当てた店舗も作りました。どちらのお客さまも共存できるよう、お店を分けたのです。

白石: どの店舗でも商品が変わらないという話には、すごく気付きがありました。

 メーカーや小売りがターゲットだと思って売っていた物が、実は違う人も使っていたというのは、今でこそSNSによって表に出るものの、昔は気付けないことでしたよね。

 そして気付いてからそこにビジネスを広げていくというのも、素晴らしい決断ですね。

司会: そうですよね。業態変更をしたという形ですか? それとも新店舗をオープンするときに、元よりあるワークマンの色を変えたのでしょうか?

濱屋: 基本的には新店舗を増やしています。今は昔からあるワークマンを、職人向けのワークマンプラスに改装を行っています。

白石: そういう本来じゃない使い方って意外にあると思いますし、企業はそれをどれだけ拾えるかですよね。

 食事も同じで、企業は『冷凍焼き餃子』としか売ってないけど、それをアレンジするレシピっていっぱいあるんですよ。それってもともと想定していないものなので、食品に限らず衣料品でも意外な使い方はたくさんあるんだと思います。

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