マーケティング・シンカ論

「俺たちのワークマンが変わってしまう」をどう解決? ファンが離れないブランド作り(1/4 ページ)

» 2024年01月11日 08時00分 公開
[ほしのあずさITmedia]

【編集履歴:2024年1月11日午後2時0分 記事の一部を修正しました。】

 市場競争によってさまざまな商品の基本スペックが向上したいま、消費者が機能や性能で商品を選ぶことは難しくなりつつある。これを受け、体験やストーリーによる「共感」を購入の決め手とする消費者が増えているようだ。共感を集めてファンを増やすために、企業はどのような工夫をしているのか。

 カスタマーサクセスプラットフォームを提供するコミューン(東京都品川区)のカンファレンスで、「生活者に選んでもらうブランド・企業になるにはどうすれば良いか?」をテーマに味の素とワークマンが対談した。

 料理に欠かせない定番商品を抱えながらも、若い世代へのアプローチに悩み、新しい策を探している味の素のR&B事業部エグゼクティブマネジャー白石卓也氏と、職人向けの作業着店からファンの層を広げ、若い女性向けのブランドも持つワークマンの社外取締役濱屋理沙氏が登壇。コミューン執行役員CMO 杉山信弘氏が司会を務めた。

 味の素とワークマンは「新たなマーケットの開拓と既存顧客のファン化」について、どのような取り組みを講じているのだろうか。 

当対談は2023年12月5〜6日、カスタマーサクセスプラットフォーム「commmune」を提供するコミューン(東京都品川区)のカンファレンス「Commmune Community Days」で実施された。カンファレンスのテーマは「生活者に選んでもらうブランド・企業になるにはどうすれば良いか?」。(出所:プレスリリース、以下同)

おじさん連中が考えても意味がない 味の素の工夫

(出所:プレスリリース)

白石: 味の素自体は、正直知らない人はいないと思います。ですが消費者調査をしたところ、顧客層が偏っていることに気付いたんです。

 40〜50代の女性や、60代以上からの支持はありますが、若い女性層やZ世代にリーチできていないことに問題意識を持ち始めました。その人たちにどうアプローチしようかと考えた時に、食品・調味料以外のサービスやアピール方法も必要だと感じ、試行錯誤しています。

 現在は、Z世代向けにサービスや商品を開発するために女性向けのコミュニティーを結成し、取り組んでいます。

司会: スーパーに行くと、どの棚にも何かしら御社に関わりがあるものが並んでいますが、そもそもスーパーに行かない人や料理をしない人にアプローチできていないという危機感があったということですね。

白石: 20、30年後、今の若い人が消費の中心になっていくので、どうやって信頼してもらえるかが重要なテーマですね。

司会: Z世代に対してコミュニケーション、マーケットを作っていく際に、最も気を付けたポイントは何ですか?

白石: まず私たちがその世代を理解しなければならないですよね。50〜60代のおじさん連中が考えてもうまくリーチできないので。

 Z世代のメンバーだけを集めた組織を作って、彼ら自身でサービスを考えてもらうことにしました。

司会: 色んな業務をしている中で、プロジェクトチームのようにアサインしたということですか?

白石: そうですね。希望を募ってやりたい人に集まってもらいました。ただ大企業ということもあり、普通の仕事の中に組織を作ってもうまくいかないのではないかと考え、オフィスの場所を変えて仕事してもらったんです。

 マネジメントも若い層に自由に任せ、大企業の雰囲気に飲まれないように隔離してサービスを作ってもらいました。

司会: コワーキングスペースのような場所で働いているということですね。新たにテクノロジーソリューションや起業家との出会いはありましたか?

白石: ありますね。相当刺激を得たと思います。

 今ってもう自分の企業だけで何かをすることはできないじゃないですか。色んな企業の人とコラボをしながら、どのように新しいサービスを作っていくかは必須になりますよね。

司会: 刺激的ですよね。これから味の素に入社したいと思う人も増えそうですね。

白石: そうなってくれるといいなと思います。

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