マーケティング・シンカ論

「俺たちのワークマンが変わってしまう」をどう解決? ファンが離れないブランド作り(4/4 ページ)

» 2024年01月11日 08時00分 公開
[ほしのあずさITmedia]
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「報酬ナシ」でもワークマンのアンバサダーが50人もいるワケ

司会: アンバサダーって一般の人とも、専門家や従業員とも違いますよね。コミュニケーション面で何か決めていることや、大事にしていることはありますか?

濱屋: まず、アンバサダー制度には報酬がないんですよね。

 普通、企業は動画を1本上げたら何万円、インスタ1投稿で数万円などとお願いするんですけど、ワークマンは無償でも良いからやりたいという人を募集します。アンバサダーになったら絶対に発信をしないといけない、というわけではないので、気楽に受けられます。

 自分の好きだった企業とつながれて、そこの中の人と会って、自分で商品開発ができるかもしれない。しかもそれが日本全国のワークマンで販売される可能性がある。普通の人だと得られないチャンスがもらえるので、無償ではあるものの、私はwin-winだと思っています。

 またワークマンの場合、春夏と秋冬で年2回、多くのインフルエンサーさんが集まる展示会を行っています。まだ他の人が紹介していない新商品を紹介すると、YouTubeの再生数も大きく上がりますので、そこからの広告収入やフォロワー増加につなげています。お金が発生していない分、上下関係も生まれない中立的な関係です。

 「この商品のここが使いづらいけど、お金をもらっているから言えない」なんてこともない。社員さんが偉いわけでもないし、インフルエンサーが偉いわけでもない。面白い関係ですよね。

司会: 今のステマ規制法みたいなところとも合致していますね。役割を命じて本音を言ってもらう。報酬に関しても、無償で統一とキッチリしているので、これから進んでいく未来に合致した取り組みだと感じました。

 白石さんには、Z世代とのコミュニケーションで気を付けていることをお教えいただけますか?

白石: Z世代向けのサービスは、基本的に食品にこだわらずに、彼らが日頃何に困っているのか、課題に思っているのかを考え、それを解決するところをスタートとしています。

 今、色んなサービスに取り組んでいますけど、私たちはZ世代がどういう考え方なのか、生活スタイルなのかを知りたいんです。単に「これを食べてくれるか」「これはおいしいか」だけでなく、考え方が分からないとその後のサービスや商品開発ができないので、そこは取っ払っているのが特徴です。

司会: Z世代がどういう生活をして、どういう考え方をしているのかを起点に開発をしているということですね。そこの主従が逆になると全く違ったものになりますし、消費者も気付くと思います。良いアプローチですね。

「ブランドのファン」を育成する方法

白石: 悩んでいるのは、商品に対するファンはいても、そこからどうブランドのファンに広げていくかという部分ですね。

 ワークマンさんって、ワークマンのファンがついているイメージがあるんですよ。最初は商品のファンから入っているんだと思うんですけど、そこからお店のファンになっていくというのは、どういう仕掛けがあるんですか?

濱屋: ワークマンでは「高機能・低価格」を徹底しています。

 商品を作るにあたって、機能からじゃなくまず価格を決めるんですよ。例えば980円で出すと設定してから、価格に合う機能を搭載していく。だから、どの商品を見てもはっ水、防水がついていて、値段も安い。店頭でも「ワークマンだから、何でも安いよね」と値段を見ずに買う人もいるくらいです。

 それは企業が一貫して「安くて良いものを出したい」と打ち出し続けた結果、皆さんが安心して買ってくれるようなブランドのイメージができたんだと思います。

司会: 一番大切なのは、新たな手法を選択するにも、パーパスやビジョンといった会社が成し遂げるべき未来に立ち返ることですよね。その時にファンの方々の声を拾い、徐々に仕組化していくところは、共通する部分があるのかなと思います。

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