マーケティング・シンカ論

ユーザー調査の「使いたいと思います」を信じてはいけない、3つの理由グッドパッチとUXの話をしようか(2/5 ページ)

» 2024年01月17日 09時35分 公開

1.利用意向を問う設問の「点数評価」を鵜呑みにしてはいけない

 コンセプトテストでは、その商品の方向性にユーザーが興味を示しているか測るために「この商品(サービス)を利用したいと思いますか?」という設問がよく使われます。

 利用意向はそのまま質問にすると「使いたいと思いますか?」となりますが、実はこの「使いたいと思う」という表現はとても曖昧(あいまい)です。

 例えば、テレビやSNSで見かけたもので「気になるな、使ってみたい(買ってみたい)な」と思うことは皆さんもよくあると思います。ですが、そう思ったものの中で、実際に購入したものはどのくらいありますか?

 正直、筆者は気になったものが50個あったとして、購入したものは1つあればいいほうです。もちろんユーザーも同じで、パッとみたものに対して「使いたいと思う」ことと「実際に買う」ことは全く違います。そのため、利用意向を聞く際には、以下のように具体的な行動を問う言い回しにすることが大切です。

利用意向を調査する際には具体的な行動を問う言い回しにすることが大切

 また、こうした調査では、意向の程度を測るために便宜的に数字を使っていますが、そもそも人の行動に対するモチベーションは主観的であり、定量的にきっちり切り分けられるものではありません。

 さらに言えば、数字に抱く印象(心象)も人によってまちまち。点数をシビアにつける人もいれば、甘めにつける人もいるわけです。

 実際、定性調査のインタビューで聞いてみると「4:使うと思う」という選択肢を選んだ人の中でも「使いたい人もいるんじゃないですか? 私は使わないですけど」という感じの人もいれば、「めっちゃいいですね、使いたいです! でも、XXXが気になるので5ではなく4かな」といった温度感のユーザーもいるのが実態です。

 こうなると、1と5の差は明確ですが、2〜4の差はほとんどないといっても過言ではありません。さまざまなユーザーの点数の平均をとってもあまり意味がない、と思いませんか?

 大切なのは、5つの数字に惑わされることなく「どこに価値を感じているのか?」「どんな課題を解決できるのか?」といった背景や理由を問い、その内容から根拠と温度感を把握した上で点数を捉えることです。背景や理由をアンケートで聞くのもいいでしょう。

 ちょっとした小技ですが「選べる数字を6段階にする」のも有効です。特に日本人に多いのですが、人間は中央の数字を選ぶ傾向が強いため、「3:どちらともいえない」という選択肢があると「どちらかというと……」といった気持ちがあっても3を選んでしまいます。

 これは「ゴルディロックス効果」や「アンカリング効果」と呼ばれ、「極端な意見を回避したい」という人間心理から由来しています。

 1〜3をネガティブな指標、4〜6をポジティブな指標にして中央をなくすことで、受容性があるかないかをよりはっきりさせることができます。

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