冒頭で紹介した通り、コンセプトテストでは、とあるアイデアに対して、ユーザーが興味を示しているか測るために「この商品(サービス)を利用したいと思いますか?」という問いを提示します。
コンセプトを提示する際は、利用のイメージがわくようにストーリーボードと呼ばれる4コマ漫画を添付したり、サービスの体験がイメージできる動画を見てもらったりします。コンセプトの文章だけでは、イメージがわきづらいことは何となく理解いただけると思いますが、4コマ漫画や動画でもイメージがわかないユーザーも多いのが実態です。
そこで効果的なのは、簡易的にサービスを体験できるプロトタイプを用意し、それを体験してもらった上で「明日からもこれを使い続けてもらえますか?」と問う方法です。
「簡易的といっても、サービスを作るのはコストが……」と思われるかもしれませんが、簡易版を作れるようサポートしてくれるWebサービスやアプリはたくさんあり、数時間程度で作れてしまうものもあります。
例えば、以前筆者が利用したのはLINEのビジネスアカウントで、サービスのレコメンドを「カードタイプメッセージ」という機能を使うことで擬似的に体験してもらいました。
実際に「いいね」や「口コミをみる」といったアクションも行えるので、そのアクションにどんな意図や期待があったのかも知れるほか、どんなユーザーがどんなときに閲覧やアクションをするかまで分かったため、サービスのブラッシュアップにとても役立ちました。
当社は、新たな価値を持つサービスや商品を模索するプロジェクトを数多く手がけてきました。定性調査も得意としていますし、クライアントが安心して「これだ!」と言えるための方法を研究し続けています。
ただ、新たな価値を作るのは簡単なことではありません。イノベーションはたくさんの失敗の上に生まれるもの。つまり、いかに失敗を積み上げられるかが重要なのです。とは言え、失敗に膨大な時間や資金を使うのはもったいない。今回紹介したコンセプトテストは、失敗を効率的、そして効果的に重ねられる手段とも言えるのです。
一方で、コンセプトテストで多くのユーザーに受け入れられることが分かったサービスが、イノベーションにつながったり、大成功したりするかどうかは懐疑的です。
もちろん、誰のためにもならないサービスを作るべきではありませんが、数が少なくとも、熱狂的なユーザーを生むサービスを作るというのも必要なアプローチだと考えています。
分かりやすい例が「iPhone」「LINE」「X」です。サービスに強い愛着を持ったユーザーやデベロッパーの手で、当初の想定を超えたさまざまな使い方が次々に生み出されたことで、利用者が爆発的に広がっていきました。
最初の使い手を誰にして、その人が次の使い手をどう呼んでいくのか……ユーザーの広がりまで戦略的にデザインしていく。正しくコンセプトテストを行えば、そんなイノベーションに向けたヒントも得られるかもしれません。
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