ニトリ、ニデック、幸楽苑……相次ぐ「創業者の出戻り」 業績が改善しても、手放しに喜べないワケ古田拓也「今さら聞けないお金とビジネス」(1/2 ページ)

» 2024年01月26日 07時00分 公開
[古田拓也ITmedia]

 ニトリホールディングス(HD)は、創業者である似鳥昭雄氏が10年ぶりに社長に復帰することを発表した。これにより、似鳥氏はニトリHDの会長と社長を兼任することになる。

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 この人事変更は、ニトリの国内事業の立て直しと、海外展開の加速を図るための戦略的な決定とされている。ニトリは、円安の影響で実施した商品の値上げによって客数が低迷しかけており、イオンなどの他業界大手が導入してきた値下げ戦略に立ち返りつつある。

 それでもニトリの2023年は苦しい展開となっていた。4〜12月の国内既存店・月次売上高推移を確認すると、客数は11月を除く全ての月で前年同月を下回り、全体では5.9%減少している。客単価は6.1%上昇しているものの、売上高は0.2%マイナスの減収となった。

 幸いなことに、海外市場は成長領域となっているが、23年末時点の海外店舗数は170店舗と、総数の2割弱のシェアであある。現地消費者の認知度向上や全社収益を牽(けん)引していく事業基盤の構築には一定の時間がかかると予想されている。

 似鳥氏が社長に復帰する決断をしたのも、自身が見識のある国内事業を中心に、未曾有のインフレや円安によるコスト増に伴う事業の再構築が急務であったからだと考えられており、現社長の武田氏はグローバル市場での成長加速を担当するという二人三脚での経営にシフトチェンジするとみられている。

 こうした“復帰”のニュースはニトリだけではない。23年6月には幸楽苑ホールディングスで、創業者の社長就任が話題となった。こちらのケースでも、低迷する国内事業で会社がピンチになったタイミングで創業者の新井田伝氏が復帰した。同社の月次売上高を見ると、23年6月を境に直営店全店の売上高が10ポイントほど急改善し、客足も回復している様子が確認できる。

photo 幸楽苑ホールディングスの月次売上推移

相次ぐ創業者の“出戻り” 業績が回復したとしても……

 実は国内企業でのこうした”出戻り劇”は珍しくない。ファーストリテイリングの創業者である柳井正氏も02年に玉塚元一氏に社長の座を譲り、第一線からしりぞいたが、売上目標の未達もあって、わずか3年足らずで社長職に復帰した。その後のユニクロの急成長は誰もが知るところだろう。柳井氏の復帰により、ユニクロはグローバル展開とブランドの強化に成功し、グローバルなアパレルブランドへと生まれ変わった。

 14年に会長に就任し、CEOのポジションを一度関潤氏に譲ったニデック(旧日本電産)の創業者、永守重信氏のケースと重なってみえる。ニデックの業績低迷を受けて、21年に永守氏は再びCEOに復帰した。

 永守氏の就任から2年が経過した24年3月期2四半期決算によれば、同社の売上高は1兆1606億円となり前年同期比2.6%の増収となった。また、営業利益は1157億8200万円と前年同期比で20.1%増の2桁成長を達成するとともに、同社の過去最高益を更新したのである。

 ピンチの時に陣頭指揮を執る創業者の存在は顧客や取引先、株主にとって心強い印象を与えるとともに、業績の改善も伴うケースが多いようだ。

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